予知夢
作品DATA
  • 出版社 文藝春秋社(ISBN:4163192905)
  • 発刊日 2000/06/20
  • 文庫化 文春文庫(ISBN:4167110083)
  • 文庫発刊日 2003/08/10
  • Detail 内容:夢想る(ゆめみる)/ 霊視る(みえる)/ 騒霊ぐ(さわぐ)/ 絞殺る(しめる)/ 予知る(しる)
  • お薦め度 ☆☆☆☆
  • お気に入り指数 ☆☆☆☆
作品Outline
帝都大学理工学部物理学科助教授の湯川学が、科学者の視点から難解な謎に挑む連作ミステリの第二弾。

警視庁捜査一課に勤務する草薙俊介の足は、今日もまた、帝都大学理工学部物理学科第13研究室へと向かっている。
16歳になった少女の存在を17年前から知っていた男、殺害された時刻に自分の奇禍を恋人に知らせに行った女、失踪した夫の代りに騒霊と出会ってしまった主婦、父親の死の前日に「火の玉」を見た少女、浅ましい大人たちの未来を言い当てる病弱な「予知少女」―、
マスコミを喜ばせそうな事件が相次ぐ中で、草薙が頼れる人間は、この男をおいては他にない。
「全く君という男は…、よくもまあそれだけ次から次へと胡散臭い話を持ってきてくれるね」と呆れる湯川だが、そのまなざしは既に、「オカルトを暴く」物理学者のものになっていた。

作品Review
著者は、『予知夢』の刊行時に、以下のような言葉を残しています。
『探偵ガリレオ』の第二弾。前作では専門的な道具が多く、たぶん抵抗を感じた読者も多かっただろう。
そこで本作では徹底的に、「オカルトを暴く」という部分にスポットを当てた。その分、主人公が理系の知識を駆使するシーンが少なくなってしまったのだが、それがよかったのかどうかはよくわからない。
ところで、前作、本作と発表するのと相前後して、テレビで『トリック』という番組が話題になったのには苦笑した。別にパクられたとは思わない。物理学者がオカルトを暴く――よくある話である。
『予知夢』では、予知・予見という、身近な超常現象が題材に用いられています。
また、「綱引き競争」に勝利するコツなど、生活の中にとけこんだ科学情報も、数多く盛り込まれています。
草薙のように、「俺はもう運動会に出る予定はない」と拗ねる人でなければ、興味深い記述にあふれた一冊となる事でしょう。

  • 夢想る(ゆめみる)
    女子高校生の部屋に不法侵入を試みた男が、少女の母親に見咎められて逃走し、ひき逃げ事故を起こしてしまう。
    平凡な事件と思われたが、男は、少女が誕生する前からその姓名を認識していた事が判明し、捜査陣を慌てさせる。
    嫌なタイプの人は居ても、悪人が登場しない物語なので、読後には切ない思いを余儀なくされます。夢想る(ゆめみる)少年の夢想が、こんなにも惨い悲劇を招こうとは―。
  • 霊視る(みえる)
    クラブのホステスがマンションの自室で殺害されたが、ほぼ同じ時刻に、全く別の場所で彼女の姿を見た男が存在した。男はホステスの恋人であった。
    捜査員の間では、被害者の霊が男に事件を知らせに行ったのではないか?という声まで出始めている。
    卑劣な犯罪ではあるものの、加害男性の献身的な愛情には、胸が塞がれます。石神哲哉(『容疑者Xの献身』に登場する天才数学者)のミニチュア版といったところでしょうか。
  • 騒霊ぐ(さわぐ)
    草薙俊介は実姉の頼みを断り切れず、夫が行方不明になってしまった女性の相談に乗るはめになる。ありふれた失踪事件と思われたが、彼女の夫が消息を絶ったと想像される住居に、ポルターガイストに似た現象が起る事を聞き及び―。
    作品それ自体の面白さもことながら、草薙の、ラブロマンスの到来を予感させる事態にも、深い興味を覚えました。湯川がためらいがちに贈った言葉に、このコンビの、好ましい心の交流を垣間見た気分になる事でしょう。
  • 絞殺る(しめる)
    多額の借金を抱える工場主が、ホテルの一室で死体となって発見された。彼の娘は事件前夜に火の玉が飛んだと証言している。
    超常現象か?それとも―。
    『一射入魂』が真相の鍵を握ります。
    未解決事件の様相を見せる展開ですが、謎を解明した湯川がそれを希望するのであれば、円満な結末という事になるのでしょう。
  • 予知る(しる)
    愛人女性が、相手の男性への恨み言を残して、自殺を図った。男性の部下が現場に向かうが、彼女は既に事切れていた。
    目撃証言の裏付けを取るために、聞き込み捜査を行っていた所轄署の刑事達だが、事件を予知していた少女の存在を知り、驚愕する。
    事態が二転三転する展開に、長編ミステリ級の面白さを満喫できますが、結末部分に登場する「予知少女」の台詞には、言葉を失った読者も少なくないでしょう。これ以上にない意外なラスト、と言えるのかもしれません。
2005年9月15日に更新
探偵ガリレオのProfile
  • 姓名 湯川学
  • 職業 帝都大学理工学部物理学科助教授
  • 身体的特徴 長身・痩躯で、足が長い。俳優の佐野史郎さんに似た容貌。眼鏡を使用しているが、視力は不明。
  • 湯川学が解決した事件を紹介した書籍
    ・『探偵ガリレオ(ISBN:4163177205)』
    ・『予知夢(ISBN:4163192905)』
    ・『容疑者Xの献身(ISBN:4163238603)』
  • 人物評定 天才的な頭脳を持つが、運動能力にも長けている。バドミントン部ではエースだった。
    非科学的で凡庸な友人(草薙俊介)に対しては、皮肉交じりの発言が多いが、優しい一面も併せ持つ。と言うよりは寧ろ、根底にある人の好さを隠そうとして、COOLで狷介な人物を装っているふしもある。
    白衣を脱げば、どこから見ても、物理学者とは思えない雰囲気を醸し出す。とある日の装いは、アルマーニの黒いシャツに、黒いサングラスだった。学者に見えないどころか、堅気の人間にも見えそうにもないところが凄い。
  • ガリレオの由来 捜査一課の人々の呼称であり、広範囲に親しまれている愛称、というような性格のものではない。
    警視庁捜査一課の草薙俊介は、「超常現象?」と疑いたくなるような事件に出くわす事が多いが、社会学部出身の彼には歯が立たない分野である。そこで、大学時代の部活(バドミントン部)仲間だった湯川学の知恵を借りて、不可思議な事件を科学的に解決するというパターンが出来上がった。
    餅は餅屋と思ったのかどうか、草薙の上司は、一般人の介入を疎んじるどころか、湯川を「ガリレオ先生」と祭り上げて頼る事とした。
『予知夢』の登場人物一覧
湯川学(36歳) 帝都大学理工学部物理学科助教授
通称ガリレオ先生
草薙俊介(36歳) 警視庁捜査一課の刑事・湯川の友人・帝都大学社会学部出身
間宮警部:警視庁捜査一課勤務・草薙俊介の上司・「ガリレオ」の名付け親 / 牧田刑事:警視庁捜査一課勤務・草薙俊介の同僚 / 小田刑事:瀬戸富由子(「予知る」に登場)の事件を担当した所轄署の刑事
■ 夢想る(ゆめみる)
坂木信彦:家業の電気工事業を手伝う・森崎家への不法侵入を試みたが由美子が猟銃を発砲して来たために逃走・逃走途中でひき逃げ事件を起こす / 中本:坂木信彦の小学校時代の友人 / 森崎敏夫:輸入品販売会社社長 / 森崎由美子:敏夫の妻・ / 森崎礼美:森崎夫妻娘・高校生 / 坂本富子:信彦の母親 / 加奈子:信彦の実姉 / 桜井努:デザイナー
■ 霊視る(みえる)
長井清美:クラブのホステス・自宅で他殺体となって発見される / 細谷忠夫:会社員・長井清美と交際している / 小杉浩一:フリーライター・細谷忠夫の大学時代の友人 / 山下恒彦:細谷忠夫・小杉浩一の大学時代の友人 / 織田不二子:長井清美の友人 / 前田千晶:フィギュアスケートの選手 / 金沢頼子:フィギュアスケートの指導者 / 石原由里:フィギュアスケートの指導者
■ 騒霊ぐ(さわぐ)
森下百合:草薙俊介の実姉 / 神崎弥生:森下百合の友人の妹 / 神崎俊之 :弥生の夫・健康機器メーカーのサービスエンジニア・行方不明になっている / 高野ヒデ:神崎俊之の顧客・神崎が失踪した時期に他界している / 高野昌明:高野ヒデの甥 / 高野理枝:高野昌明の妻 / 近藤夫妻:高野昌明の知人
■ 絞殺る(しめる)
矢島忠昭:「ヤジマ工業」の社長・ホテルの一室で、死体となって発見される / 矢島貴子:忠昭の妻 / 矢島秋穂:忠昭の娘・小学5年生 / 光太:忠昭の息子・小学3年生 / 坂井善之:「ヤジマ工業」の従業員 / 鈴木和郎:「ヤジマ工業」の従業員 / 田中次郎:「ヤジマ工業」の従業員 / 蒲田:ホテルの支配人代理
■ 予知る(しる)
菅原直樹:製造メーカーの管理職 / 菅原静子:菅原直樹の妻 / 蜂村英和:菅原直樹の部下であり、大学の後輩でもある / 瀬戸富由子:広告代理店勤務・菅原直樹の愛人・自室で自殺を図る / 予知少女:瀬戸富由子が自殺を図る三日前に、同様の出来事を見たと訴えている / 飯塚朋子:予知少女の母親 / 蜂村紀子:蜂村英和の妻