容疑者Xの献身
作品DATA
容疑者Xの献身
  • 出版社 文藝春秋(ISBN:4163238603)
  • 発刊日 2005/08/30
  • 文庫化 未定
  • 文庫発刊日 未定
  • Detail ガリレオシリーズ初の長編
    第134回直木賞受賞作/第6回本格ミステリ大賞受賞作
    『このミステリーがすごい!2006年版』・『本格ミステリ・ベスト10 (2005)』・『週刊文春 傑作ミステリーベスト10』の第1位を獲得(三冠は史上初)
  • お薦め度 ☆☆☆☆☆
  • お気に入り指数 ☆☆☆☆☆
作品Outline
「天才なんて言葉を迂闊には使いたくないけど、彼には相応しかったんじゃないかな。50年から100年に1人の逸材といった教授もいたそうだ」―、帝都大学物理学教室の俊才、湯川学にそう言わしめた男が、密かな好意を寄せていた女性を救うために、犯罪に手を染める事となった。男の名前は石神哲哉、現在は高校で教鞭を取っている。

アパートの隣室からだならぬ気配を感じ取った石神は、その部屋の住人である花岡靖子・美里の元に訪れ、事の顛末を察知する。石神は、動揺する母娘に対し、協力者となる旨を申し入れた。
天才数学者と言われた男の卓抜たる頭脳が、完全犯罪を構築するための数式を組み立て始める。

P≠NP予想の概念に基づいた難問に、ガリレオ先生こと湯川学が挑む長編ミステリ。予想だにしない結末が用意されている。

作品Review
ガリレオシリーズとしては初の長編となるため、期待の大きさも一層のものがありましたが、得られた感動はそれを上回りました。

湯川学が初めて登場した『探偵ガリレオ』は、東野圭吾さんが、「自分の持っている理系の知識を駆使して小説を書いてみたいと思っていた(著者の一言コメントより)」事から誕生した連作短編集です。科学にはとんと無縁な脳には、ただあんぐりとするばかりの世界が広がりましたが、分かり易い表現に助けられて、面白楽しく読み進める事ができました。
続く『予知夢』では難度が幾分か引き下げられ、「オカルトを暴く」という事がテーマになりました。こちらも、興味深い話題に心躍らせながら、ページをめくって行きました。
『容疑者Xの献身』では、前二作の核をなした「科学」は登場しません。「天才数学者」と称された男性を中心に展開する物語だからです。
その代わり―、という表現が適切かどうかは分かりませんが、丹念な人物描写が行われています。 短編集では味わう事が適わなかった深い感慨が、突如として降り注いで来る物語でした。

伏線が公明正大であるために、草薙刑事は言うに及ばず、ガリレオ先生をも先んじた推理力を発揮する読者も少なくないでしょう。
けれどもそれは、P≠NP予想における、P⊆NPをを明らかにしたに過ぎません。本当の証明は、そこから始まる新たな物語の中にあります。

私はガリレオシリーズで初めて泣きました。

2005年8月27日にup
探偵ガリレオのProfile
  • 姓名 湯川学
  • 職業 帝都大学理工学部物理学科助教授
  • 身体的特徴 長身・痩躯で、足が長い。俳優の佐野史郎さんに似た容貌。眼鏡を使用しているが、視力は不明。
  • 湯川学が解決した事件を紹介した書籍
    ・『探偵ガリレオ(ISBN:4163177205)』
    ・『予知夢(ISBN:4163192905)』
    ・『容疑者Xの献身(ISBN:4163238603)』
  • 人物評定 天才的な頭脳を持つが、運動能力にも長けている。バドミントン部ではエースだった。
    非科学的で凡庸な友人(草薙俊介)に対しては、皮肉交じりの発言が多いが、優しい一面も併せ持つ。と言うよりは寧ろ、根底にある人の好さを隠そうとして、COOLで狷介な人物を装っているふしもある。
    白衣を脱げば、どこから見ても、物理学者とは思えない雰囲気を醸し出す。とある日の装いは、アルマーニの黒いシャツに、黒いサングラスだった。学者に見えないどころか、堅気の人間にも見えそうにもないところが凄い。
  • ガリレオの由来 捜査一課の人々の呼称であり、広範囲に親しまれている愛称、というような性格のものではない。
    警視庁捜査一課の草薙俊介は、「超常現象?」と疑いたくなるような事件に出くわす事が多いが、社会学部出身の彼には歯が立たない分野である。そこで、大学時代の部活(バドミントン部)仲間だった湯川学の知恵を借りて、不可思議な事件を科学的に解決するというパターンが出来上がった。
    餅は餅屋と思ったのかどうか、草薙の上司は、一般人の介入を疎んじるどころか、湯川を「ガリレオ先生」と祭り上げて頼る事とした。
※ いつもは素晴らしい名コンビ(親分子分?)ぶりを発揮する湯川学と草薙俊介ですが、『容疑者Xの献身』では、ある程度の距離を置いています。
相応の事情が存在するためですが、このシリーズのファンは、一抹の寂しさを禁じ得ないでしょう。
『容疑者Xの献身』の登場人物一覧
湯川学 帝都大学理工学部物理学科助教授
通称ガリレオ
草薙俊介:警視庁捜査一課の刑事・湯川の友人・帝都大学社会学部出身 / 石神哲哉:高校の数学教師・湯川の友人・帝都大学理学部数学科出身 / 花岡靖子:弁当屋「べんてん亭」の従業員 / 花岡美里:靖子の娘・中学生 / 米沢:「べんてん亭」の経営者 / 米沢小代子:米沢の妻 / 富樫慎二:花岡靖子の前夫 / 岸谷刑事:警視庁捜査一課勤務 / 間宮班長:警視庁捜査一課勤務 / 山辺曜子:自転車を盗まれた主婦 / 工藤邦明:印刷会社経営・花岡靖子の知人 / 上野実香:花岡美里の同級生 / タマオカハルカ:花岡美里の同級生 / 森岡:石神哲哉の教え子 / 杉村園子:クラブ『まりあん』の雇われママ / 常盤:帝都大学の大学院生