私が彼を殺した
作品DATA
私が彼を殺した
  • 出版社 講談社ノベルス(ISBN:406182046X)
  • 発刊日 1999/02/05
  • 文庫化 講談社文庫(ISBN:4062733854)
  • 文庫発刊日 2002/03/15
  • Detail 加賀恭一郎が登場。
    本文では犯人が特定されていない。文庫版は、西上心太さんの袋とじ解説に真犯人を示唆するヒントが記されている。
  • お薦め度 ☆☆☆☆
  • お気に入り指数 ☆☆☆
作品Outline
脚本家であり、作家でもある穂高誠が、新進の女流詩人、神林美和子との結婚式当日に毒殺された。容疑者は、穂高のマネージャーを務める駿河直之、敏腕編集者の雪笹香織、そして、美和子の兄、貴弘の3人。
物語は、容疑者3人の一人称三視点で構成されるが、内の2人は事件後に「自分が彼を殺した」と述懐している。余す1人も、被害者への憎悪や殺意を隠そうとはしていない。だが、実際に手を下したのは1人―。
誰が彼を殺したのか?

本文中には犯人を明かす記述がない。
先に刊行された『どちらかが彼女を殺した』よりも難度が高いとされている。

作品Review
私は、姉妹編となる『どちらかが彼女を殺した』よりも本作の方が好きです。
被害者に感情移入して切ない思いを余儀なくされる、という事がない作品だからです。 『私が彼を殺した』の容疑者達は、誰もが殺意を抱くに足る、十分な動機を持っていました。被害者は葬り去られるに相応しい人間性を有していました。
従って、私にとっての一番の謎は、「誰が彼を殺したか」ではなく、「なぜ神林美和子はこんな男と結婚する気になったのか」と言う事でした。

本作には、男女の複雑な愛憎劇、屈折した恋愛感情が描かれています。
東野作品は余韻を残した終わり方をするものが多いので、読者が、自分のなりの大団円を想像できる、という楽しみがあるのですが、『私が彼を殺した』にはそうした背景があるために、暗澹たる未来しか見えて来ません。
もしかしたら、最も穏やかな日々を送る事ができるのは、犯人なのかもしれない、とも思えます。

作者は、「(メフィスト誌の)連載を読んだ人と単行本で読んだ人とでハンディが出ないように工夫した」と語っています。
メフィスト版とノベルズ・文庫版を読み比べる事ができる人なら、面白さも倍加する事でしょう。

2005年9月11日に更新
文庫版ネタバレ推理
この項では、管理人の推理を紹介しています。「読んでみよう」と思われる方は、↑のタイトル部分をクリックしてください。
明らかなネタバレ事項なので、明らかなネタバレ事項なので、未読の方はご注意ください。
加賀恭一郎のProfile
  • 姓名 加賀恭一郎
  • 職業 警察官
    勤務先: 高柳バレエ団に関する一連の事件を扱った時には警視庁捜査一課勤務。その後、練馬署に移動し、現在(2006年)は久松署勤務。
    役職: 1996年に、加賀は、巡査部長と記された名刺を提示し、「どうせ使い切る前に、新しいのを作ることになるんですから…」と発言している。同年に殺害された和泉園子の兄康正は、これを転勤か昇進のためと推測した。1999年度も練馬署勤務である事と併せて類推すると、役職は警部補である可能性が高い。
    ※ 『悪意』の野々口修には警視庁捜査一課員として対峙しているので、本庁⇒練馬署⇒本庁⇒練馬署⇒久松署という流れかもしれない。
  • 身体的特徴 長身で肩幅が広い。容疑者達の言葉を借りれば「爽やかとでも形容できそうな顔で笑う」が、捜査現場では隙のない鋭い目を光らせている。彫りの深い顔立ちであるため、逆光では目元が黒く見える。顎は尖っている。喫煙をしないので歯が白い。
  • 特技 剣道:国立T大在学中に全日本選手権で優勝。
  • 趣味 茶道・クラシックバレエ鑑賞
  • 加賀恭一郎が解決した事件を紹介した書籍
    『卒業-雪月花殺人ゲーム-(国立T大在学中の事件)』『眠りの森』『どちらかが彼女を殺した』『悪意』『私が彼を殺した』『嘘をもうひとつだけ』『赤い指』
  • 人物評定 国立T大在学中は、剣道部の部長を務める等して、リーダーシップと協調性に富んだ人物であったが、警察官になってからは、単独行動が目立つ。能弁ではないが、寡黙でもない。情は深いが冷静沈着。犯罪者に対しても優しさや思いやりを失わないのは、大学時代の苦い経験が影響しているためか?それとも―。
    社会学部出身の、所謂、文系人間だが、工学・化学・情報科学への造詣も深い。
  • 恋の遍歴 高校・大学を共に過ごした相原沙都子にプロポーズするも、見事に撃沈。沙都子の方は、好意はあるが恋情には至らない、といったところか。
    但し、『眠りの森』では、沙都子を「大学時代の恋人」として扱っている。男女間のランク分けには大雑把な処理をするようだ。
    3年間のブランクを経て、今度は新進気鋭のバレリーナ、浅岡未緒に恋をする。その後の進捗状況は不明だが、未発展の場合でも、美貌のダンサーと大恋愛をした、と述懐する可能性があるので要注意。
  • その他1 大学卒業後の2年間は教員生活を送るが、「教師としては失格(『眠りの森より』)」と判断して辞職、警察官になる。教壇を離れるに至った詳細は『悪意』に記されているので、興味のある人は参照の事。
  • その他2 シリーズ第一弾である『卒業-雪月花殺人ゲーム-』において、加賀の父親の職業は警察官であることが紹介されていたが、第七弾の『赤い指』では、従弟も同業であったことが明かされる。警視庁捜査一課に勤務(2006年夏現在)する松宮脩平がその人。
『私が彼を殺した』の登場人物一覧
加賀恭一郎(30歳前後) 練馬警察署勤務の刑事
穂高誠:脚本家兼小説家・「穂高企画」のオーナー / 神林美和子:詩人・穂高誠の婚約者 / 神林貴弘:大学の量子力学教室に在籍・研究員・神林美和子の兄 / 駿河直之:穂高誠のマネージャー・「穂高企画」の実務責任者 / 雪笹香織:出版社勤務・神林美和子担当の編集者 / 浪岡準子:動物病院に勤務・助手 / 古橋:穂高誠の担当弁護士 / 西口絵里:編集者・雪笹香織の後輩 / 穂高道彦:穂高誠の兄 / 渡辺警部:警視庁捜査一課勤務 / 木村刑事:警視庁捜査一課勤務 / 土井刑事:警視庁捜査一課勤務 / 中川刑事:警視庁捜査一課勤務 / 山崎刑事:警視庁捜査一課勤務 / 菅原刑事:警視庁捜査一課勤務