嘘をもうひとつだけ
作品DATA
嘘をもうひとつだけ
  • 出版社 講談社(ISBN:4062100487)
  • 発刊日 2000/04/10
  • 文庫化 講談社文庫(ISBN:4062736691)
  • 文庫発刊日 2003/02/15
  • Detail 内容:嘘をもうひとつだけ/ 冷たい灼熱/ 第二の希望/ 狂った計算/ 友の助言
  • お薦め度 ☆☆☆☆
  • お気に入り指数 ☆☆☆☆
作品Outline
明日に繋がるものを残して自殺した元ダンサー、場違いな匂いを残して殺害された主婦・アリバイを故意に隠した母親、保冷剤をタップリ買い込んだ未亡人、夫の奇禍より「ゴミ出し」を優先させた妻―、些細な謎に拘った刑事の慧眼が、難事件の突破口を切り開く。

加賀恭一郎の卓抜たる推理力を堪能できる連作ミステリ。

作品Review
  • 嘘をもうひとつだけ
    弓削バレエの事務局で働いていた元ダンサーが、自宅マンションから転落死した。誰かと争ったような形跡はないが、自殺と判断するには不自然な状況が存在する。
    犯人が沈黙を貫けば、真相解明は困難と思われる事件でした。嘘を隠すための小さな嘘が躓きの石となる、という事でしょう。

    「前にも申し上げたでしょう。バレエには少々関心があるのです
    「冗談かと」
    「冗談をいうこともありますが、それは本当のことです」

    『眠りの森』の読者にとっては、「そこのところをもう少し詳しく!」と言いたくなるようなやり取りがありました。
    どうしても必要な会話、という風には見えませんので、作者のちょっとした悪戯、って事になるでしょうか?

  • 冷たい灼熱
    田沼洋次の妻、美枝子が、自宅洗面所で死体となって発見された。死因は絞殺。長男である1歳の裕太は行方不明。警察は、営利誘拐を視野を入れた捜査を開始する。
    発端は、夏によくある、あの出来事にありました。犯人は「こんな不細工なこと」を「隠したかった」と述懐します。
    上からモノを言う形で批判するのではなく、徹頭徹尾「恥ずべきこと」として扱う方が、啓蒙効果があるのかも、と思ったり―。
  • 第二の希望
    楠木母子が暮らすマンション自室で、母親の愛人が絞殺された。紐状のもので絞められたような痕跡がある。女性の力では成し得ない出来事と映るが、外部犯の可能性は低い。
    『鳥人計画』の杉江翔や、『美しき凶器』の佐倉翔子を育てる環境を描いた物語です。
    何かに秀でた人間を育てるには「やり過ぎ」が付き物―。楠木真知子のような母親がいるお陰で、私たちも「手軽な感動」を手に入れられる事を思えば、安易な批判は禁物かもしれないと感じました。
    事件とは全く無関係のように思えるタイトルが、最大のキーポイントになっています。
  • 狂った計算
    建設会社の建築士が行方不明になった。建築士と不倫関係にある坂上奈央子に疑惑の目が注がれる。
    坂上奈央子の夫のような男が、今の時代にも存在しているのでしょうか?橋田壽賀子ドラマの陰惨バージョン、といえるような展開でした。
    二人の企みが成功すれば良かったのに、と思いましたが、加賀恭一郎シリーズにそれを求めるのは無理だというもので―。
  • 友の助言
    加賀の友人である会社社長が交通事故で重傷を負った。居眠り運転だった。「運転中に居眠りなどする男ではない」事を知っている加賀が、事故の背景を探る。
  • 警察署のデータファイルには入力されない事件。瑣末な事象も見逃さない加賀の慧眼が、友人の決断を促しました。
2005年10月1日に更新
加賀恭一郎のProfile
  • 姓名 加賀恭一郎
  • 職業 警察官
    勤務先: 高柳バレエ団に関する一連の事件を扱った時には警視庁捜査一課勤務。その後、練馬署に移動し、現在(2006年)は久松署勤務。
    役職: 1996年に、加賀は、巡査部長と記された名刺を提示し、「どうせ使い切る前に、新しいのを作ることになるんですから…」と発言している。同年に殺害された和泉園子の兄康正は、これを転勤か昇進のためと推測した。1999年度も練馬署勤務である事と併せて類推すると、役職は警部補である可能性が高い。
  • 身体的特徴 長身で肩幅が広い。容疑者達の言葉を借りれば「爽やかとでも形容できそうな顔で笑う」が、捜査現場では隙のない鋭い目を光らせている。彫りの深い顔立ちであるため、逆光では目元が黒く見える。顎は尖っている。喫煙をしないので歯が白い。
  • 特技 剣道:国立T大在学中に全日本選手権で優勝。
  • 趣味 茶道・クラシックバレエ鑑賞
  • 加賀恭一郎が解決した事件を紹介した書籍
    『卒業-雪月花殺人ゲーム-(国立T大在学中の事件)』『眠りの森』『どちらかが彼女を殺した』『悪意』『私が彼を殺した』『嘘をもうひとつだけ』『赤い指』
  • 人物評定 国立T大在学中は、剣道部の部長を務める等して、リーダーシップと協調性に富んだ人物であったが、警察官になってからは、単独行動が目立つ。能弁ではないが、寡黙でもない。情は深いが冷静沈着。犯罪者に対しても優しさや思いやりを失わないのは、大学時代の苦い経験が影響しているためか?それとも―。
    社会学部出身の、所謂、文系人間だが、工学・化学・情報科学への造詣も深い。
  • 恋の遍歴 高校・大学を共に過ごした相原沙都子にプロポーズするも、見事に撃沈。沙都子の方は、好意はあるが恋情には至らない、といったところか。
    但し、『眠りの森』では、沙都子を「大学時代の恋人」として扱っている。男女間のランク分けには大雑把な処理をするようだ。
    3年間のブランクを経て、今度は新進気鋭のバレリーナ、浅岡未緒に恋をする。その後の進捗状況は不明だが、未発展の場合でも、美貌のダンサーと大恋愛をした、と述懐する可能性があるので要注意。
  • その他1 大学卒業後の2年間は教員生活を送るが、「教師としては失格(『眠りの森より』)」と判断して辞職、警察官になる。教壇を離れるに至った詳細は『悪意』に記されているので、興味のある人は参照の事。
  • その他2 シリーズ第一弾である『卒業-雪月花殺人ゲーム-』において、加賀の父親の職業は警察官であることが紹介されていたが、第七弾の『赤い指』では、従弟も同業であったことが明かされる。警視庁捜査一課に勤務(2006年夏現在)する松宮脩平がその人。
『嘘をもうひとつだけ』の
登場人物一覧
加賀恭一郎 練馬署勤務の刑事
■ 嘘をもうひとつだけ
寺西美千代:弓削バレエ団の事務局長・元プリマドンナ / 真田:弓削バレエ団の演出家 / 早川弘子:弓削バレエ団の事務局に勤務・元バレエダンサー・自宅マンションの敷地内で転落死体となって発見される / 寺西智也:寺西美千代の夫・振り付け師・故人 / 新川祐二:寺西智也の親友・作曲家・故人 / 松井要太郎:弓削バレエ団のバレエマスター・故人
■ 冷たい灼熱
田沼洋次:工作機械メーカーに勤務 / 田沼美枝子:洋次の妻・自宅で絞殺体となって発見される / 田沼裕太:洋次の子供・乳児・行方不明になっている / 木嶋ひろみ:田沼家の隣家に住む主婦 / 中井利子:新聞配達所の集金係 / 坂上和子:田沼家の近所に住む主婦 / 村越警部:事件の担当捜査官
■ 第二の希望
楠木真知子:会計事務所に勤務・週に3回はダンススクールのインストラクターを務める / 楠木理砂:真知子の娘・11歳・体操教室に通っている / 毛利周介:真知子の愛人・真知子のマンションで絞殺死体となって発見される
■ 狂った計算
坂上奈央子:主婦 / 坂上隆昌:奈央子の夫・製薬会社勤務・交通事故で死亡 / 阿部絹江:坂上家の隣人 / 中瀬幸伸:建築士
■ 友の助言
萩原保:加賀の友人・会社社長(イベントプロデューサー)・居眠り運転で交通事故を起こす / 萩原峰子:保の妻 / 萩原大地:保の息子 / 葛原留美子:アートフラワー教室の講師