宿命
作品DATA
宿命
  • 出版社 講談社ノベルス(ISBN:4061814877)
  • 発刊日 1990/06/05
  • 文庫化 講談社文庫(ISBN:4061854445)
  • 文庫発刊日 1993/07/15
  • Detail wowowがドラマ化 2004年12月26日放送
    出演: 柏原崇(和倉勇作) / 藤木直人(瓜生晃彦) / 本上まなみ(瓜生美佐子) / 他
  • お薦め度 ☆☆☆☆☆
  • お気に入り指数 ☆☆☆☆☆
作品Outline
UR電産の新社長が殺害された。
凶器に使用されたボウガンが、UR電産の創業者一族、瓜生家の所有物であった事から、警察は、同家を中心にした捜査を開始する。

捜査陣の一員である和倉勇作は、運命を皮肉を痛感せずにはいられない。前社長の死去に伴い、瓜生家の当主となった瓜生晃彦は、勇作の宿敵とも言える存在であったからだ。
資産家の御曹司でありながら公立の学校に通う晃彦に、勇作は、理性では制御し切れない敵がい心を抱き続けていた。それ故に、彼を凌ぐ存在になろうと孤軍奮闘したものであった。だが、報われる事はなかった。
そして今、更に過酷な現実が提示される。晃彦の妻として登場した瓜生美佐子は、勇作の初恋の人であり、終止符を打った後にも変わらぬ想いを寄せ続けていた女性であった。

主人公達の運命の糸、宿命をモチーフにした、本格長編推理。

作品Review
東野圭吾さんの最高傑作は?と問われれば、まず『白夜行』を挙げ、『秘密』と『容疑者Xの献身』も素晴らしい作品と言い添えます。
でも、一番好きな作品という事になれば、迷わずに『宿命』と答えます。
本書を初めて読んだ時の感慨は、15年の歳月が流れた今でも、少しも色褪せる事がないままに、気持ちの中の奥深くに刻み込まれています。
作中の誰かに深く感情移入し、自分の中の新たな価値観として取り入れる形の感動・感銘ではありませんが、読後の余韻に圧倒された作品でした。

作者は、『宿命』執筆後の雑誌インタビューで、以下のように語っています。

殺人事件があって、トリックがあって、犯人はこの人、という意外性だけの作品では物足りなくなってきました。ミステリーではないと言われてもいいから、そういう作品は避けて通りたいと思っています。
この発言を元にしたかどうかは不明ですが、書店員さんが「東野圭吾を読むならこの本、原点という小説です」というポップを書き、それがきっかけとなって、『宿命』ブームが起こりました。
刊行から14年、文庫化されてから11年目という長い歳月を経て、ベストセラー作品の仲間入りを果たした事になります。
その年、2004年の冬にはwowowでドラマ化され、こちらも好評を博しました。

私は、ラスト10ページに記された「真相」に思い至る事ができませんでした。
この真相を、予想だにしなかった事と絶句するか、「やっぱり…」と思うかでも、本書のもたらす感動は大きく違ってしまいます。私は、自分の察しの悪さを誉めてやりました。

『宿命』は、結末部分がとても魅力的であることから、「ラストを先に読まないでください」という言葉が盛んに使われて来ました。2004年秋の文庫版『宿命』の帯には、「タイトルに込められた真の意味。それは最後の10ページまでわからないのです……。」との注釈まで付いていました。
ここまで執拗に惹起されれば、ラストから読むような悪習を持たない人でも、コピーに惑わされて思わず覗いてしまった、なんて事があったかもしれません。
ラストに寄せる期待が過剰に膨らみ過ぎて、十分な満足感を得ることが叶わなかった読者もいるでしょう。
最新作の『容疑者Xの献身』も、帯と中身には、世界観の違いが存在するように感じました。
書籍の宣伝文句は、読了後の感動にリンクするものであって欲しいと思います。

2005年10月10日に更新

以下にはネタバレ事項が含まれますので、続きを「読んでやってもいい」と思われる方は↓のタイトルをclickしてください。

ネタバレReview
『宿命』の登場人物一覧
和倉勇作(30歳前後) 島津警察署(所轄署)巡査部長
事件の担当捜査官
瓜生晃彦:準主役・統和医科大学講師・この地方の資産家である瓜生家の当主 / 瓜生美佐子:準主役・晃彦の妻・和倉勇作の昔の恋人 / 瓜生直明:病没・UR電産の前社長・晃彦の父親 / 瓜生亜耶子:直明の後妻・晃彦とは義理の関係 / 瓜生弘昌:直明の次男・亜耶子の実子 / 瓜生園子:直明の長女・亜耶子の実子 / 瓜生和晃:故人・晃彦の祖父・UR電産の創始者 / 須貝正清:UR電産の新社長 / 須貝行恵:正清の妻 / 須貝俊和:正清の一人息子 / 須貝忠清:故人・正清の父親 / 松村顕治:UR電産常務・直明の腹心の部下 / 尾藤高久:UR電産勤務・瓜生直明の元秘書 / 中里専務:UR電産勤務 / 池本:UR電産勤務・開発企画室の室長 / 上原雅成:故人・上原脳神経外科病院元院長 / 上原伸一:上原脳神経外科病院現院長・雅成の女婿 / 上原晴美:伸一の妻・雅成の娘 / 山上鴻三:医師・故上原雅成の友人 / 江島壮介:美佐子の実父 / 江島波江:壮介の妻・美佐子の実母 / 内田澄江:瓜生家の家政婦 / 片平:古書商 / 前田教授:修学大医学部・神経心理学の研究者 / 相馬教授:梓大人間科学部・心理学の研究者 / 末永教授:北要大工学部 / 紺野警視:県警捜査一課の主任捜査官 / 西方警部:県警捜査一課の班長・事件の担当捜査官 / 織田警部補:事件の担当捜査官 / 福井刑事:事件の担当捜査官 / サナエさん:レンガ病院(上原脳神経外科病院)の入院患者