卒業-雪月花殺人ゲーム
作品DATA
卒業-雪月花殺人ゲーム
  • 出版社 講談社(ISBN:4062027283)
  • 発刊日 1986/05/20
  • 文庫化 講談社文庫(ISBN:4061844407)
  • 文庫発刊日 1989/05/15
  • Detail 江戸川乱歩賞受賞第一作  文庫の解説は権田萬治さん  加賀恭一郎が探偵役を務める 
  • お薦め度 ☆☆☆
  • お気に入り指数 ☆☆☆
作品Outline
国立T大学に通う女子大生牧村祥子が、入居している女性専用アパートの自室で、死体となって発見された。現場の状況は自殺を窺わせるが、幾つかの矛盾した供述が出て来た事から、警察は、自殺・他殺の両面を視野に入れた捜査を開始する。高校以来の仲間である加賀恭一郎ら6人も、様々な思いを錯綜させながら、祥子の死の真相を探ろうとしていた。
そんな中、今度は彼らの恩師が主催する茶会の最中に新たな死者が出た。

茶道の作法に秘められた謎に、後の敏腕刑事、現役大学生の加賀が挑む。

作品Review
今の大学生が本作を読むと、ひどく窮屈なものを感じるのではないでしょうか?
自由を謳歌するどころか、頑迷な価値観を、当然のことのように受け入れてしまっているところに、「時代」や「古さ」を、実感するのではないかと思います。
では、刊行当時ならば標準的な感覚だったのか、といえば、それがそうでもないのです。
今時にしては珍しい「硬派」な人間が揃っている、という印象を受けました。
作者が体育会系の部活に所属していた事は知っていましたから、「神・天皇・平民・奴隷」制度下で4年間を過ごした人の概念が投影されているって事なのか?などと、言わずもがなの妄想を繰り広げたものでした。

雪月花式カードトリックに関して―。
初めて紐解いた時には、解明部分を飛ばし読みました。
本格ミステリの醍醐味は、読者自身がその謎を解く事にあると思います。少なくとも、私はそうです。
従って、加賀に先んずる事ができなかった時点で、「この項は終了!」という気分になってしまいました。
二回目に読んだ時には、流れぐらいは理解しておこうと、実際に紙を用意して、手順を追いました。読んで理解するよりは簡単なので、「よく分からない、でも気になる」という人は、試してみてください。
三回目以降からは、飛ばし読みに戻っています。

『秘密』や『白夜行』から東野圭吾作品に入った読者には、物足りなさが残る内容かもしれません。
ただ、作者が20代の瑞々しい感性を持っていた時代の作品には、中堅人気作家となってしまった今の東野圭吾さんにはない魅力もあります。加賀恭一郎の原点を覗いてみるか、というぐらいの、軽い感覚でお読みいただければと思います。

社会に出てしまうと、自分の幸福のために友人を犠牲にする事に対して、学生時代ほどの罪悪感を抱かなくなります。
無論、学生時代から、友達を暇つぶしのための道具、というぐらいにしか思っている人も居るでしょうが…。
19年前には、とても不快に感じた登場人物が、今読むと、ごく普通の人のように思えます。犯人にも、原因を作った人にも、殺された人にも、同等の労わりの感情を持つことができます。
そして、唖然となるのです。
加賀達ではなく、南沢雅子の心情が理解できる立場になってしまった事を、思い知るわけですから―。

2005年9月29日に更新
加賀恭一郎のProfile
  • 姓名 加賀恭一郎
  • 職業 警察官
    勤務先: 高柳バレエ団に関する一連の事件を扱った時には警視庁捜査一課勤務。その後、練馬署に移動し、現在(2006年)は久松署勤務。
    役職: 1996年に、加賀は、巡査部長と記された名刺を提示し、「どうせ使い切る前に、新しいのを作ることになるんですから…」と発言している。同年に殺害された和泉園子の兄康正は、これを転勤か昇進のためと推測した。1999年度も練馬署勤務である事と併せて類推すると、役職は警部補である可能性が高い。
  • 身体的特徴 長身で肩幅が広い。容疑者達の言葉を借りれば「爽やかとでも形容できそうな顔で笑う」が、捜査現場では隙のない鋭い目を光らせている。彫りの深い顔立ちであるため、逆光では目元が黒く見える。顎は尖っている。喫煙をしないので歯が白い。
  • 特技 剣道:国立T大在学中に全日本選手権で優勝。
  • 趣味 茶道・クラシックバレエ鑑賞
  • 加賀恭一郎が解決した事件を紹介した書籍
    『卒業-雪月花殺人ゲーム-(国立T大在学中の事件)』『眠りの森』『どちらかが彼女を殺した』『悪意』『私が彼を殺した』『嘘をもうひとつだけ』『赤い指』
  • 人物評定 国立T大在学中は、剣道部の部長を務める等して、リーダーシップと協調性に富んだ人物であったが、警察官になってからは、単独行動が目立つ。能弁ではないが、寡黙でもない。情は深いが冷静沈着。犯罪者に対しても優しさや思いやりを失わないのは、大学時代の苦い経験が影響しているためか?それとも―。
    社会学部出身の、所謂、文系人間だが、工学・化学・情報科学への造詣も深い。
  • 恋の遍歴 高校・大学を共に過ごした相原沙都子にプロポーズするも、見事に撃沈。沙都子の方は、好意はあるが恋情には至らない、といったところか。
    但し、『眠りの森』では、沙都子を「大学時代の恋人」として扱っている。男女間のランク分けには大雑把な処理をするようだ。
    3年間のブランクを経て、今度は新進気鋭のバレリーナ、浅岡未緒に恋をする。その後の進捗状況は不明だが、未発展の場合でも、美貌のダンサーと大恋愛をした、と述懐する可能性があるので要注意。
  • その他1 大学卒業後の2年間は教員生活を送るが、「教師としては失格(『眠りの森より』)」と判断して辞職、警察官になる。教壇を離れるに至った詳細は『悪意』に記されているので、興味のある人は参照の事。
  • その他2 シリーズ第一弾である『卒業-雪月花殺人ゲーム-』において、加賀の父親の職業は警察官であることが紹介されていたが、第七弾の『赤い指』では、従弟も同業であったことが明かされる。警視庁捜査一課に勤務(2006年夏現在)する松宮脩平がその人。
『卒業-雪月花殺人ゲーム』
の登場人物一覧
加賀恭一郎(21〜22歳) 国立T大社会学部4年生・剣道部主将
相原沙都子:準主役・文学部4年生・加賀が想いを寄せている / 金井波香:文学部4年生・剣道部員 / 藤堂正彦:理工学部4年生・修士課程に進む志望を持っている / 牧村祥子:文学部英米学科4年生・藤堂の恋人 / 若生勇:4年生・テニス部員・兄が学生運動の闘士 / 井沢華江:文学部4年生・若生勇の恋人(以上6名と加賀は高校時代からの友人関係を継続している) / 河村登紀子:文学部の助手 / 小野弘美:文学部の学生 / 古川智子:牧村祥子の隣室の住人・T大の3年生 / 三島亮子:S大の剣道部員・父親は地域財界の有力者 / 秋川義孝:県警の交通課勤務・剣道四段 / 森田:T大の3年生・剣道部員・新主将 / 筒井:T大の3年生・剣道部員 / 斎藤:T大の1年生・剣道部員 / 野口:T大の1年生・剣道部員 / 浜島直美:T大の2年生・剣道部員 / 須藤千枝子:T大の2年生・剣道部員 / 丸山:社会学部の助手 / 松原:理工学部の教授 / 矢口:M大剣道部の元主将 / 寺塚:理工学部4年生・ピエロの人形を製作 / 相原広次:相原沙都子の父親・電子機器メーカーの重役 / 相原達也:沙都子の実弟・K大のボート部員 / 相原佳江:広次の妻・沙都子と達也の継母 / 金井惣吉:金井波香の父親・工務店経営・剣道家 / 金井孝男:波香の兄 / 加賀の父親:警察官・雪月花式のカードトリック解明に大きなヒントを与える / マスター:『首ふるピエロ』の経営者 / 南沢雅子:加賀達の高校時代の恩師・(高校の)茶道部の顧問 / 佐山刑事:事件の担当捜査官