おれは非情勤
作品DATA
おれは非情勤 出版社 -----
発刊日 -----
文庫化 集英社文庫(ISBN:4087475751)
文庫発刊日 2003/05/20
Detail 内容: おれは非情勤:6×3・1/64・10×5+5+1・ウラコン・ムトタト・カミノミズ / 放火魔をさがせ / 幽霊からの電話  オリジナル文庫  解説は細谷正充さん
お薦め度 ☆☆☆
好感度 ☆☆☆☆
作品Outline
「おれ」は非常勤講師。本来の担当教師が、産休による長欠や病気治療、急逝等の理由で教壇に立てなくなった時に、仕事が回って来る。
生来の仕事嫌いでこの職も好きではないが、それなりの事は心得ている。なぜ非常勤講師をしているのかと尋ねられれば、ミステリ作家になるのが夢なので、と答えるつもりだ。
「おれ」は、児童に冗談を言って笑わせるなんて事はしない。「おれ」には、こいつらに好かれる必要がないからだ。出欠を取ったらすぐに授業を始める「おれ」に、子供たちはうんざりした顔をしながらも、従っている。

「おれ」が1997年から1999年の丸2年間に勤めた小学校は、一文字小学校・二階堂小学校・三つ葉小学校・四季小学校・五輪小学校・六角小学校の、計6校である。その後の沙汰は聞かないから、もしかしたら、本当にミステリ作家になってしまったのかもしれない。
クールで非情(?)な非常勤講師、「おれ」の事件簿。他に、ジュブナイル(児童読み物)が2篇収録されている。

作品Review
  • 6×3
    一文字小学校の体育館で、女性教諭が刺殺体となって発見された。
    殺害現場付近には、スコアボードに使う「6」と「3」の数字板と、丸めた紅白旗が「×」の形で置かれている。「6×3」と読み取れるが、それは何を意味するのか?
    「おれ」は、ことある毎にやる気のなさを誇示し、児童を「傍若無人な猿ども」と評する御仁ですが、その猿のために、校長や教頭を「気まずそうに黙り込ませる」台詞をサラリと言ってのけたりもします。でも、「実は結構イイ人ね、あなた」なんて言ったら、怒るか拗ねるかするのでしょう。
  • 1/64
    二階堂小学校5年3組で財布の盗難事件が発生した。被害は2件だが、内の1人は被害額を明かさない。
    クールなはずの「おれ」なのに、諭し方は妙に浪花節的です。そんな「おれ」に惹かれて、ページを繰る手が止まらなくなる作品集ですが……。^^
  • 10×5+5+1
    三つ葉小学校5年3組の児童たちはとても行儀が良い。だが、元気がなくて子供らしい覇気も伝わって来ない。前任教師の事故死が、彼らの心に暗い影を落としているのか?
    悲しく切ない物語でした。
    「おれ」が深い溜息をつきながら語った話には胸を打たれましたが、これは、非常勤教師だからこその言葉だったのでしょう。森元先生が、「人間って弱いものだ。で、教師だって人間なんだ」と言えていたら―。
  • ウラコン
    四季小学校6年2組の児童の様子がおかしい。釈然としない思いを抱きながら子供たちの様子を観察していた「おれ」は、女子児童の自殺行を発見することになった。
    この女子児童の辛さはよく分かります。イイ歳した大人でも凹みそうな出来事でした。
    「人を好きになって得をすることはたくさんあるけど、嫌いになって得するなんてことはめったにない」という「おれ」の台詞。嫌いになってはいけません、と教えるよりは、何層倍もの効き目がありそうです。
  • ムトタト
    「修学旅行を中止にせよ、しなければ自殺する、いたずらではない」と記した脅迫状が届けられた。また、脅迫文を入れた封筒には縦書きで「先生ムトタトアケルナ」という文字が―。
    今これを読んでいるあなたなら、「ムトタト」の謎が解けてしまうかもしれませんね。
    最近の学校は、犯人のような児童・生徒を気遣って色々な配慮を行なっているようですが、そんな小手先の策を講じるより、「おれ」を倣った方が良いような気がします。
  • カミノミズ
    六角小学校の児童が、ラベル部分に「神の水」と書かれたペットボトル入り飲料水を口にして倒れた。砒素中毒であった。たちの悪い悪戯なのか?
    「神の水」の意味が分かれば、謎も解明できます。
  • 放火魔をさがせ
    5年生の小林竜太は、町内会の夜回りに参加した。放火事件が相次いだためである。だが、皮肉な事に、夜回りに加わったメンバーの家から出火してしまった。
    竜太の、零点の答案用紙が事件解決に貢献しました。のび太君以外にも零点を取る子供が存在するようです。
  • 幽霊からの電話
    竜太の家の留守番電話に、間違い電話が録音されていた。学校の友達に話したところが、他にも何人かの家で、同様の出来事があったようだ。誰かの悪戯だと思い、犯人捜しに乗り出した竜太達だが、驚いたことに、間違い電話の主は他界していた。
    ダイヤルディスプレイが主流となった現在では成立し難い内容ですが、感動的なラストが用意されています。
『おれは非情勤』は、学習研究社発刊の『5年の学習』・『6年の学習』に連載されました。期間は1997年〜1999年。
1997年度に小学校5年生だった子供は、2年間に渡って、東野圭吾作品を楽しめたことになります。
『放火魔をさがせ』と『幽霊からの電話』は、『学習・科学 読み物特集』に掲載されました。
『天空の蜂』『悪意』『秘密』を執筆する傍らで、ジュブナイルまで手掛けていた東野さんは、今更ではありますが、本当に多才な人です。児童向け雑誌に「おれ」のような個性の強い教師を持って来るところも凄い!
加筆訂正のない原文も是非読んでみたいものです。
2006年8月22日に更新
『おれは非情勤』の登場人物一覧
■ おれは非情勤 ■
おれ(25歳) 小学校の非常勤講師
児童に媚びないことを信条にしている
■ 6×3
林田教頭:一文字小学校の教頭 / 村山教諭:一文字小学校5年2組の担任教師・産休を取っている / 浜口教諭:一文字小学校の教師・体育館で遺体となって発見される / 山田教諭:一文字小学校の教師・遺体の第一発見者 / 校長:一文字小学校の校長・形式主義者 / 学年主任:一文字小学校5学年の主任・「おれ」に一文字小学校の指導方針を伝授 / 山口卓也:5年2組の児童・問題児 / 斉藤剛:5年2組の児童・問題児 / 永井文彦:5年2組の児童 / 浜口コウゾウ:浜口教諭の夫 / 根岸刑事:事件の担当捜査官
■ 1/64
藤原教諭:二階堂小学校5年の学年主任 / 教頭:二階堂小学校・事なかれ主義者 / 山田:二階堂小学校5年3組の男子児童 / 秋本直樹:二階堂小学校5年3組の児童 / 吉岡雅也:二階堂小学校5年3組の児童 / 金田:二階堂小学校5年3組の男子児童 / 木下:二階堂小学校5年3組の男子児童 / 婦人警官:市中で起こった中学生による万引き事件を捜査している
■ 10×5+5+1
佐藤教諭:三つ葉小学校5年の学年主任 / 森本元教諭:三つ葉小学校5年3組の元担任教師・ゴールデンウィーク中に事故死する / 下村彩香:三つ葉小学校5年3組の児童・クラス委員 / 山本:三つ葉小学校5年3組の男子児童 / 鈴木:三つ葉小学校5年3組の男子児童 / 田中:三つ葉小学校5年3組の男子児童 / 森本婦人:森本元教諭の母親 / 江藤刑事:森本元教諭の事故死について調べている
■ ウラコン
藤崎教諭:四季小学校6年2組の担任教師・事故で入院している / 山下教諭:四季小学校6年の学年主任 / 教頭:四季小学校の教頭・権威主義的な人物 / 医師:救急病院の担当医 / 長瀬秋穂:四季小学校6年2組の児童 / 田宮康平:四季小学校6年2組の児童 / 宮本拓也:四季小学校6年2組の児童・クラス委員 / 吉井良太:四季小学校6年2組の児童 / 金田雅彦:四季小学校6年2組の児童 / 木村雄介:四季小学校6年2組の児童 / 内山健太:四季小学校6年2組の児童
■ ムトタト
校長:五輪小学校の校長・事なかれ主義者 / 赤村教頭:五輪小学校の教頭 / 横井教諭:五輪小学校6年の学年主任・6年1組の担任教師 / 岩瀬教諭:五輪小学校6年2組の担任教師 / 中山瞬:五輪小学校6年3組の児童 / 日下絵里:五輪小学校6年3組の児童 / 矢野将太:五輪小学校6年3組の児童 / 関口順平:五輪小学校6年3組の児童 / 矢野健太:五輪小学校3年2組の児童・矢野将太の弟
■ カミノミズ
吉岡清美教諭:六角小学校の養護教師・美人 / 原田教諭:六角小学校6年の学年主任 / 校長:六角小学校の校長・禿げ頭 / 前田厚志:六角小学校6年3組の児童 / 松下健太郎:六角小学校6年3組の児童 / 花井理沙:六角小学校6年3組の児童 / 橋本裕太:六角小学校6年3組の児童 / 鈴木智美:六角小学校6年3組の児童 / 岡田:六角小学校近くの住人 / 葛西刑事:事件の担当捜査官
■ 放火魔をさがせ ■
小林竜太 小学5年生
ハナコ:小林竜太の担任教師 / 山下:小林竜太の同級生 / とうちゃん:小林竜太の父親 / かあちゃん:小林竜太の母親 / 細川:小林竜太の家族が属する町内会の一員・家が夜回り当番の集会所になっている / 薬局のおやじ:夜回り当番 / 米屋のおやじ:夜回り当番 / めがねの刑事:事件の担当捜査官 / 若くてやせた刑事:事件の担当捜査官
■ 幽霊からの電話 ■
小林竜太 小学5年生
ハナコ:小林竜太の担任教師 / 山下:小林竜太の同級生 / とうちゃん:小林竜太の父親 / かあちゃん:小林竜太の母親 / 朝倉知美:小林竜太の同級生・勉強はできるが生意気 / 森本:小林竜太の同級生 / 田中:田中生花店の店主・禿げている / 佐藤夫人:田中生花店の顧客・交通事故で死亡 / 佐藤則彦:佐藤夫人の息子 / おじさん:佐藤則彦の父親