名探偵の掟
作品DATA
名探偵の掟
  • 出版社 講談社(ISBN:4062074001)
  • 発刊日 1996/02/25
  • ノベルス 講談社ノベルス(ISBN:406182015X)
  • ノベルス発刊日 1998/04/05
  • 文庫化 講談社文庫(ISBN:4062646188)
  • 文庫発刊日 1999/07/15
  • お薦め度 ☆☆☆☆
  • お気に入り指数 ☆☆
作品Outline
主演:天下一大五郎  助演:大河原番三(除「最後の選択」)
プロローグ
第一章 密室宣言---トリックの王様
第二章 意外な犯人---フーダニット
第三章 屋敷を孤立させる理由---閉ざされた空間
第四章 最後の一言---ダイイングメッセージ
第五章 アリバイ宣言---時刻表トリック
第六章 『花のOL湯けむり温泉殺人事件』論---二時間ドラマ
第七章 切断の理由---バラバラ殺人
第八章 トリックの正体---???
第九章 殺すなら今---童謡殺人
第十章 アンフェアの見本---ミステリのルール
第十一章 禁句---首なし死体
第十二章 凶器の話---殺人手段
エピローグ
最後の選択---名探偵のその後
作品Review
公式HPの「著者の一言コメント」によれば、「『放課後』以来のヒットとなった」そうです。宝島社 「このミステリーがすごい!」でも、東野圭吾さんとしては、過去最高位の3位に入っています。

密室殺人でデビューし、以降、4作連続で密室トリックを用いて来た作者が、いきなり、その古式ゆかしい手法を扱き下ろすのです。驚き千万とはこのことだと思いました。
ショートストーリーに用いるには勿体無いようなトリックも登場します。東野圭吾さんという作家の引き出しの多さを、改めて見せ付けられたような気分になる作品集でもありました。

  • プロローグ
    県警本部捜査一課の大河原番三警部による独白。名探偵を引き立てる脇役の辛さが語られている。
    「真犯人を自分の手で見つけてはいけない」というくだりに、ニヤリとさせられます。この苦労は、ミステリの世界に留まらない性質を持つだけに、身につまされた読者が多かったかもしれません。
  • 第一章 密室宣言---トリックの王様
    村一番の旧家で、大富豪でもある壁神家の跡取り息子の祝言が行われた日、花嫁の遠縁に当たる男が殺害された。
    犯行現場は密室状態であったが―。
    「密室」を軽侮する言葉が並びます。
    デビュー作から4作目まで、立て続けに密室トリックを使用した作者だから書けた作品、ということになるでしょうか?
  • 第二章 意外な犯人---フーダニット
    著名な油絵画家である牛神貞治が、自宅の自室で殺害された。容疑者足り得る人物は大勢いるが、「意外な犯人」という命題に添った推理が展開されて行く。
    本格ミステリを揶揄する一方で、読者に対しても痛烈な批判を浴びせているところが興味深い作品。
    「わたし、途中で犯人わかったもーん」という読者が時々いるが、実際に推理してわかったのではなく、こいつだ、と適当に狙いをつけたら当たっていただけに過ぎない。
    文庫版『名探偵の掟』P.53より転載
    これはどうなのでしょう!?本格物のファンは、推理を楽しむために読んでいる人も少なくないと思うのですが…。
    私は、時にはタイムテーブルまで作成しながら犯人当てに勤しむ読者なので、当て推量と言われるのは、ちと心外なのであります。(笑)
  • 第三章 屋敷を孤立させる理由---閉ざされた空間
    矢加田伝三の別宅でパーティが行われた夜、招待客の一人が何者かに殺害された。場所は矢加田邸の裏庭、ケーブルカーを利用して、15分の位置にある。 周辺道路が寸断されているため、容疑者は限定されてしまうが、彼らは皆、アリバイを持っていた。
    「吹雪の山荘もの」は、孤立した状況を作るために、ややもすれば、相当に不自然な設定が登場して来たりもしますが、本作はその代表格と呼べそうな展開でした。
  • 第四章 最後の一言---ダイイングメッセージ
    玉沢物産の社長が、自宅の書斎で何者かに殺害された。部屋の絨毯には「WEX」と読める文字が残されている。
    最後に、一同がむっとした表情になってしまった気持ちが、よく分かります。なかなか凝った「ダイイングメッセージ」ではありますが…。
  • 第五章 アリバイ宣言---時刻表トリック
    電機メーカーに勤務するOLが、軽井沢のホテルで死体になって発見された。有力な容疑者には、鉄壁とも思えるアリバイが存在する。
    天下一が刑事役で登場。
    一度だけですが、トラベルミステリの犯人よりも上出来なアリバイを考えたことがあります。舞台になった街で暮らした経験があったからです。
    それにしてもこのオチは―。
  • 第六章 『花のOL湯けむり温泉殺人事件』論
    会社の慰安旅行で温泉地を訪れていたOLが、宿泊先の旅館に近い林の中で、遺体となって発見される。遺書らしき文書も残されていた。
    天下一が、「女子大生探偵天下一亜理沙」となって登場、謎解きばかりか、入浴シーンまで披露する。
    天下一亜理沙と大河原警部が言うように、二時間サスペンスの犯人は、配役表を見るだけでも察しがついてしまいます。
    テレビ局は、視聴者がそういう鑑賞法であることを承知している筈なのに、いつも同じパターンで押し通すのが不思議なところ。
  • 第七章 切断の理由---バラバラ殺人
    平凡な日常を送っていたかに見えた清井花枝が、糸鋸山の山中で、バラバラ死体となって発見される。
    彼女は、なぜ殺されたのか?また、その死体は、なぜバラバラにされたのか?
    その意外な真相に、体中の力が抜け落ちそうな気分にさせられましたが、私はこの作品が気に入っています。
    天下一の推理だけでも十分なのに、更なるどんでん返しを用意するのですから、頭が下がるというもの―。
  • 第八章 トリックの正体---???
    先代当主、黄部雅吉が病没した黄部邸に、雅吉の隠し子を名乗る男が現れる。その真偽を調査すように依頼された天下一。だがその矢先に、隠し子と称した灰田次郎が、何者かに殺害されてしまう。
    「人間消失」を扱った作品。
    本作の「トリック」を用いたミステリはまま存在しますが、なるほど、作中人物は、これほどまでに「辛い」思いをさせられて来たのですね。これからは、「アンフェアだ」と目くじらを立てるのはやめましょう。登場人物諸氏に向かって、「お疲れ様でした。もう、吹き出してもいいよ」と、労いの言葉を掛けることに致しましょう。
  • 第九章 殺すなら今---童謡殺人
    場所は凸凹島。旧家同士の祝言が行われるとあって、島を離れてしまった元住人が続々と帰島する中、内の一人が遺体になって発見される。その死体は、饅頭をのどにつまらせていた。
    凸凹島に古くから伝わる童謡をなぞった殺害法と分かり、捜査陣は色めき立つが、それをあざ笑うかのように、その後も連続する見立て殺人―。
    タイトルを見ただけで、結末が想像できてしまいます。
    古典本格のおどろおどろしさに現代的な価値観が加味された、何とも面妖な物語でした。
  • 第十章 アンフェアの見本---ミステリのルール
    大黒製薬の社長が、何者かに贈り届けられた毒入りチョコレートを口にして死亡した。警察が捜査を始めるが、それをあざ笑うかように、第二の事件が勃発する。
  • アンフェアの極みと、一度は憤然となるのですが、更なる意外な結末が用意されていて、最後はニヤリとさせられました。
  • 第十一章 禁句---首なし死体
    資産家が所有する、高さが60メートルもある「瞑想にふける」塔で、首なし死体が発見された。行方不明になっていた容疑者も、遺体となって現れる。混迷を極める捜査陣。
    本格ミステリの「禁句」って何でしょう?たくさんあり過ぎて、コレというのを指摘するのは難しい印象です。本作の禁句は、全てのフィクションに通じるものではないか?とも思ったり―。
  • 第十二章 凶器の話---殺人手段
    製薬会社の社長が、自身が所有するロッジの中庭で遺体となって発見された。刺殺と思われるが、凶器が見つからない。
    想像を絶する「凶器」の登場にビックリ。科学捜査が未発達な昔なら、作中人物である宮本治のような憂き目に遭った人が、実在したかもしれません。
  • エピローグ
    場所は卍家の広い居間。連続殺人事件の関係者が一堂に会する中で、天下一が推理を披露するのだが―。
    シリーズ物を終わらせてしまいたい時の、作者が用いる常套手段、ということになるのでしょうか?この結末には何の感慨もわきませんでしたが、海の向こうのあの事件は、本当に衝撃的でした。
  • 最後の選択---名探偵のその後
    資産家の別荘に集まった、「探偵」経験を持つ招待客達が次々に殺害されて行く。犯人は?そしてその動機は?
    祭りを終えた後のような寂しさが漂って来るラストシーンです。でも、ここからなら、『名探偵の呪縛』に続く道が見えなくもなく―。
2005年11月3日に更新
『名探偵の掟』の登場人物一覧
天下一大五郎 私立探偵・年齢不詳
頭脳明晰・博学多才・行動力抜群
と自称している
大河原番三:県警本部捜査一課の警部・名脇役を自認している
■ プロローグ
龍神家の未亡人:村一番の旧家であり富豪でもある家で暮らす婦人
■ 第一章 密室宣言---トリックの王様
爺さん巡査:奈落村の警察官 / 作蔵:事件の被害者・自宅で何者かに殺害される / 鉄吉:事件の第一発見者 / 壁神辰哉:庄屋の跡取り息子・壁神家は村一番の旧家で大富豪 / 花岡君子:辰哉の結婚相手 / 壁神小夜子:壁神家の当主・未亡人
■ 第二章 意外な犯人---フーダニット
牛神貞治:油絵画家・独身・牛神家の当主で資産家・自室で何者かに殺害される / 馬本正哉:雑貨ブローカーと自称している・貞治の従弟・牛神家の食客 / 馬本俊江:正哉の妻 / 虎田省三:牛神の内弟子 / 竜見冬子:牛神の弟子・牛神邸の近くで独居 / 犬塚ヨネ:牛神家の家政婦 / 鈴木刑事:事件の担当捜査官 / 山本巡査:事件の担当捜査官
■ 第三章 屋敷を孤立させる理由---閉ざされた空間
矢加田伝三:地方の名士・指折りの資産家 / 矢加田綾子:伝三の妻 / 大越一男:矢加田の友人・矢加田邸の裏山で何者かに殺害される / 鼻岡:だんご鼻の男 / 足本:青年実業家
■ 第四章 最後の一言---ダイイングメッセージ
玉沢源一郎:玉沢物産社長・自宅の書斎で何者かに殺害される / 玉沢友美恵:源一郎の妻 / 玉沢洋子:源一郎の娘 / 玉沢謙介:源一郎の女婿・洋子の夫 / タツコ:玉沢家の家政婦 / 江島渉:宝石ブローカー・友美恵の知人 / 山田一夫:玉沢物産の元従業員
■ 第五章 アリバイ宣言---時刻表トリック
古井カブ子:AB電機に勤務・軽井沢にホテルで何者かに殺害される / 只野一郎:AB電機に勤務・古井カブ子の元恋人 / 蟻場耕作:AB電機に勤務・生産設備部の課長
■ 第六章 『花のOL湯けむり温泉殺人事件』論---二時間ドラマ
藤原邦子:OL・慰安旅行先で死体となって発見される / 青木まさこ:邦子の同僚 / 山本文雄:邦子の上司 / 内田和彦:邦子の元恋人 / 坂本洋子:内田和彦の婚約者
■ 第七章 切断の理由---バラバラ殺人
清井花枝:糸鋸山の山中で、バラバラ死体となって発見される。 / 清井花枝の夫:小学校の教諭 / 牛山:医師・青空ひばり会のメンバー / 羊田:郵便局員・青空ひばり会のメンバー / 狐本:青空ひばり会のメンバー / 猫村タマ子:花枝の友人・洋品店経営・青空ひばり会のメンバー
■ 第八章 トリックの正体---???
黄部雅吉:黄部家の先代当主・病没 / 黄部矢一朗:雅吉の息子・黄部家の新しい当主 / 黄部真知子:矢一朗の妻 / 赤井留美:雅吉の娘・矢一朗の異母妹 / 灰田次郎:雅吉の隠し子と名乗り出ている / 青野:黄部家の使用人 / 山田巡査:道に迷い、大河原警部と共に黄部邸を訪ねる
■ 第九章 殺すなら今---童謡殺人
鯨塚:凸凹島の町長 / 貝本巻夫:元は凸凹島の住民であったが、10年前に島を出ていた・神社の境内で、遺体となって発見される / 婆さん:遺体の第一発見者 / 蛸田八郎:蛸田家の当主 / 蛸田ノリコ:八郎の娘 / 魚沢ひれ子:魚沢家の当主 / 魚沢鍋男:ひれ子の息子・蛸田ノリコの婚約者 / 海老原ウニ子:未亡人・第二の事件の被害者 / 大磯砂彦:カメラマン・第三の事件の被害者 / 浜岡栗子:主婦・第四の事件の被害者 / 港川水一郎:第五の事件の被害者 / 高波うず子:第六の事件の被害者
■ 第十章 アンフェアの見本---ミステリのルール
大黒一朗:大黒製薬の社長 / 大黒ノブコ:一朗の妻 / 大黒次郎:一朗の息子 / 大黒タカコ:次郎の妻 / 大黒和夫:一朗の弟 / 紺野ミドリ:大黒家の家政婦 / 桜田:大黒家の運転手 / ハナコ:警部の娘
■ 第十一章 禁句---首なし死体
雨村荒一郎:会社社長・資産家 / 雲山雪子:荒一郎の妹 / 雲山五郎:雪子の夫 / 風間大介:雨村荒一郎の知人・冒険家 / 霧野:雨村荒一郎の秘書 / 管理人:「瞑想にふける」塔の管理人
■ 第十二章 凶器の話---殺人手段
町田清一郎:薬品メーカーの経営者・ロッジ「ロの字館」の所有者 / 町田清二:清一郎の弟・「ロの字館」の管理人 / 町田泰子:清二の妻 / 宮本治:サラリーマン・「ロの字館」の宿泊客 / 佐藤リカ:宮本治の婚約者・「ロの字館」の宿泊客 / 桃川好美:清一郎の愛人 / 谷山:地元警察署の署長
■ エピローグ
卍市の介:村一番の富豪、卍家の当主 / 弥助:卍家の居間に集まった人々の一人
■ 最後の選択---名探偵のその後
西野刑吾:日本を代表する大金持ちで変人 / 二宮欽次:弁護士 / 三木ひろみ:女性記者 / 四条博之:推理小説研究家 / 五島大介:フリーライター / 六田仁五郎:暇な老人 / 七瀬トシ:暇な老婦人 / 八代新平:作家 / 九重美路菜:女子大生 / 十文字忠文:神父