虹を操る少年
作品DATA
虹を操る少年 出版社 実業之日本社(ISBN:4408532355)
発刊日 1994/08/25
文庫化 講談社文庫(ISBN:4062635070)
文庫発刊日 1997/07/15
Detail 文庫の解説は井上夢人さん
お薦め度 ☆☆☆☆
好感度 ☆☆
作品Outline
少年が、少女が、不思議な魅力を湛えた「光」の存在に気付き始める。彼らには、その「光」が、「こっちへおいでよ」とでも語り掛けているように映った。
「光」を送っているのは、白川光瑠(しらかわみつる)という名前を持つ高校生だった。
光瑠には、超人的な色彩感覚が備わっていた。 と同時に、天才と称しても良い程の高い知能も併せ持っていた彼は、「光」で音楽を奏でる独自世界、「光楽」を構築して行く。麻薬にも似た陶酔性と不可思議な求心力で、「光楽」は若者を中心にした大衆に絶大な支持を集めるが、光瑠の特殊能力を恐れる人々はそれを看過する事ができない。
世代交代を忌み嫌う闇の勢力と、光瑠はいかにして戦っていくのか!?

SFファンタジーの世界で繰り広げられる、新感覚ミステリ。

作品Review
私は東野圭吾さんの大ファンですが、全59作(2006/6/20現在)の中には、その面白さを理解できない作品があります。
本作がそれに当たります。

実は『手紙』も苦手にしているのですが、物語そのものには相応の魅力を感じていますし、ラストシーンでは、読むたびに泣かされています。ところが、本作からは、数度の再読を重ねた今でも、何の感慨も得られない状態が続いています。

初めて読んだ時期が悪かったのかもしれません。 カルト教団の脅威が盛んに取り沙汰される時代でした。『虹を操る少年』が刊行された翌年には、あの地下鉄サリン事件も起こっています。
そうした時代背景があったせいか、異形のパワーで世の中を変革しようとする主人公が、必要以上に疎ましく思えてしまったのです。

数年後に再読した際には、喉元過ぎて熱さを忘れたのか、初めて読んだ時に感じた重苦しさは霧散していました。
それでもやっぱり――、
楽しい時間を過ごせた、という気分にはなれませんでした。
主人公の発言が癇に触り、突っ込みを入れ続けたものですから、疲労困憊してしまいまして―(笑)。

私は多分、人心を操る存在に対して、生理的な嫌悪感を持っているのだと思います。
一人の天才が作った完璧な世界より、凡人が集まって迷走するみっともない社会の方を望んでいるのです。

文庫の解説で、井上夢人さんが、超人への憧れを語っておられました。 程度や対象の違いはありますが、この種の憧憬は、万人の中に存在しているのではないかと思います。
私も、関孝和・グリゴリー=ペレルマン・石神哲哉や、マイケル=ジョンソン・ジャッキー=ジョイナー=カーシー・楡井明には、超弩級のカッコ良さを感じています。でも、心身を操れる天才だけはご免被りたいです。

とは言え―、
本書を未読の方は、私の罵詈雑言を真に受けないでください。このレビューのために読むのを止めてしまっては、大きな悔いを残すことになるでしょう。
『秘密』以前の作品限定ですが、私には、東野さんが売れなかったとボヤく本を好み、好評だったという物に不満を感じる傾向が見られるのです。
『野性時代Vol.27』で特集された「東野圭吾自身が語る全作品解説」で判明した悲しい事実です。
『虹を操る少年』も好評を得たと記されていました。
(東野さんの解説から類推すると、私の不満の元凶は、年齢にあるようで…)

2006年6月20日に更新
『虹を操る少年』の登場人物一覧
白川光瑠 高校生。光楽師。超人的な色彩感覚を持つ事から、「光」で音楽を奏でる独自世界、「光楽」を構築して行く。
相馬功一:暴走族グループ「マスクド・バンダリズム」のメンバー / 志野政史:高校生(二年) / 清瀬由香:志野政史の同級生 / 小塚輝美:中学生(一年) / 木津玲子(大津聖子):アイヅの愛人 / アイヅ:正体不明の男 / 白川高行:光瑠の父親・製薬会社勤務 / 白川優美子:光瑠の母親 / 志野秋彦:政史の父親・医師・病院経営者 / 志野頼江:政史の母親 / 宇野哲也:「マスクド・バンダリズム」のリーダー / 佐分利:プロモーター / 芹沢:ジャーナリスト / 小島英和:医師・統和医科大学病院脳神経外科勤務 / 大隈友子:光楽害対策研究会のメンバー / 鳥居:大きな影響力を持つ老人