眠りの森
作品DATA
眠りの森
  • 出版社 講談社(ISBN:4061939769)
  • 発刊日 1989/05/08
  • 文庫化 講談社文庫(ISBN:4061851306)
  • 文庫発刊日 1992/04/15
  • Detail 『卒業』の加賀恭一郎が刑事として登場
    文庫の解説は山前譲さん
  • お薦め度 ☆☆☆☆
  • お気に入り指数 ☆☆☆☆☆
作品Outline
高柳バレエ団の事務所で男が殺された。被疑者は女性団員。バレエ団側は正当防衛を主張するが、捜査の結果、幾つかの不審点が浮かび上がって来る。そうした中、今度はバレエ団の敏腕演出家が毒殺された。先の事件との関連性はあるのか!?

『卒業』の加賀恭一郎が、バレエ界と言う特異な閉鎖社会で生まれた謎に挑む本格推理。

作品Review
本作に対し、著者は以下のような言葉を残しています。
苦手な分野に挑戦しようと決断し、それまで全く知識のなかったバレエ界を扱うことにした。一年間で二十回ぐらい舞台を見に行ったおかげで、趣味の世界が広がった。でも執筆時には、お世話になったバレエ団の人たちを悪く書きにくく苦労した。
『卒業』の加賀を出したのは、ちょっとしたいたずらです。
表紙はドガの「踊り子」、バレエ団の複雑な人間関係を背景にして起こる殺人事件―、
華やかな世界の、薄汚れた内実を描いた作品なのだろうと想像しながら手にしたのですが、違っていました。 平凡な日常を送る人々を圧倒する真摯な生き方、良い意味での凄味が描かれていました。
東野さんの「苦労」が上手く生かされた、という事なのかもしれません。
加賀恭一郎を再登場させてくれた「いたずら」には、勿論、大喜びでした。

読むたびに泣かされる物語ですが、初めて読んだ時と、2回目以降は、涙の出るタイミングが違います。真相を知る事で初めて理解できる痛み、悲しみというものが、この物語にはたくさん存在しましす。

「推理小説は、犯人が判明したらお仕舞いなので、二度と読む事はない」という意見もあるようですが、私は、一度ポッキリで終わるなんて勿体無いと思っています。一回目は犯人当てを楽しみ、二回目以降は作者の創意工夫(もしくは人柄の悪さ)を確認します。

加賀恭一郎は、その後にシリーズキャラクターとなり、『悪意』では教師を辞めた詳細が紹介されています。『嘘をもうひとつだけ』には、本書の存在を思い出させる記述も登場します。
ところが、『眠りの森』で生まれた恋の行方に関する続報だけは出て来ません。
「俺があなたを守ってみせる」という言葉を信じている私は、その後の展開が気になって仕方ないのですが…。こっそり密かに愛を育んでいると思っておいても良いのでしょうか?

2005年9月24日に更新
加賀恭一郎のProfile
  • 姓名 加賀恭一郎
  • 職業 警察官
    勤務先: 高柳バレエ団に関する一連の事件を扱った時には警視庁捜査一課勤務。その後、練馬署に移動し、現在(2006年)は久松署勤務。
    役職: 1996年に、加賀は、巡査部長と記された名刺を提示し、「どうせ使い切る前に、新しいのを作ることになるんですから…」と発言している。同年に殺害された和泉園子の兄康正は、これを転勤か昇進のためと推測した。1999年度も練馬署勤務である事と併せて類推すると、役職は警部補である可能性が高い。
  • 身体的特徴 長身で肩幅が広い。容疑者達の言葉を借りれば「爽やかとでも形容できそうな顔で笑う」が、捜査現場では隙のない鋭い目を光らせている。彫りの深い顔立ちであるため、逆光では目元が黒く見える。顎は尖っている。喫煙をしないので歯が白い。
  • 特技 剣道:国立T大在学中に全日本選手権で優勝。
  • 趣味 茶道・クラシックバレエ鑑賞
  • 加賀恭一郎が解決した事件を紹介した書籍
    『卒業-雪月花殺人ゲーム-(国立T大在学中の事件)』『眠りの森』『どちらかが彼女を殺した』『悪意』『私が彼を殺した』『嘘をもうひとつだけ』『赤い指』
  • 人物評定 国立T大在学中は、剣道部の部長を務める等して、リーダーシップと協調性に富んだ人物であったが、警察官になってからは、単独行動が目立つ。能弁ではないが、寡黙でもない。情は深いが冷静沈着。犯罪者に対しても優しさや思いやりを失わないのは、大学時代の苦い経験が影響しているためか?それとも―。
    社会学部出身の、所謂、文系人間だが、工学・化学・情報科学への造詣も深い。
  • 恋の遍歴 高校・大学を共に過ごした相原沙都子にプロポーズするも、見事に撃沈。沙都子の方は、好意はあるが恋情には至らない、といったところか。
    但し、『眠りの森』では、沙都子を「大学時代の恋人」として扱っている。男女間のランク分けには大雑把な処理をするようだ。
    3年間のブランクを経て、今度は新進気鋭のバレリーナ、浅岡未緒に恋をする。その後の進捗状況は不明だが、未発展の場合でも、美貌のダンサーと大恋愛をした、と述懐する可能性があるので要注意。
  • その他1 大学卒業後の2年間は教員生活を送るが、「教師としては失格(『眠りの森より』)」と判断して辞職、警察官になる。教壇を離れるに至った詳細は『悪意』に記されているので、興味のある人は参照の事。
  • その他2 シリーズ第一弾である『卒業-雪月花殺人ゲーム-』において、加賀の父親の職業は警察官であることが紹介されていたが、第七弾の『赤い指』では、従弟も同業であったことが明かされる。警視庁捜査一課に勤務(2006年夏現在)する松宮脩平がその人。
『眠りの森』の登場人物一覧
加賀恭一郎(30歳前後) 警視庁捜査一課勤務
浅岡未緒:高柳バレエ団のダンサー / 高柳静子:高柳バレエ団の経営者 / 高柳亜希子:高柳静子の娘・高柳バレエ団のプリマ / 梶田康成:高柳バレエ団の「バレエ・マスター」 / 斎藤葉瑠子:高柳バレエ団のダンサー・未緒の幼なじみ / 柳生講介:高柳バレエ団のダンサー・葉瑠子の恋人 / 森井靖子:高柳バレエ団のダンサー / 紺野健彦:高柳バレエ団のダンサー / 中野妙子:高柳バレエ団のミストレス / 坂木:高柳バレエ団の事務局長 / 斎藤夫妻:斎藤葉瑠子の両親 / 斎藤孝志:斎藤葉瑠子の甥 / 風間利之:美大を卒業・画家志望 / 宮本清美:風間利之の恋人・フリーアルバイター / 青木一弘:画家志望・ニューヨークで自殺 / 大田刑事:警視庁捜査一課勤務 / 小林警部補:所轄署(風間利之殺害事件)の捜査主任 / 富井警部:警視庁捜査一課勤務・加賀の上司 / 内村警部補:渋谷署の刑事 / 菅原刑事:渋谷署の刑事