殺人の門
作品DATA
殺人の門
  • 出版社 角川書店(ISBN:4048734873)
  • 発刊日 2003/09/05
  • 文庫化 角川文庫(ISBN:4043718047C0193)
  • 文庫発刊日 2006/06/24
  • お薦め度 ☆☆☆
  • お気に入り指数 ☆☆
作品Outline
主人公の田島和幸は裕福な家庭に生まれた。父親は歯科医院を開業し、祖母の介護が専らの仕事ではあったものの、通いの家政婦も雇っていた。しかし、その祖母の死をきっかけにして家運は傾き、果ては、一家離散の状態にまで追い込まれて行く。
和幸には、特異な感情を抱き続ける対象があった。小学校時代の同級生、倉持修である。倉持は世事に長けたところのある子供だった。倉持から仕掛けられた陥穽が和幸の憎悪を増幅し、殺意という言葉を認識させるまでに至る。
田島和幸の殺人願望が成就する日はやって来るのか!?

80年代に起こった詐欺事件をモチーフに展開する異色サスペンス。

作品Review
この物語には、実際に起こった詐欺事件が背景として描かれているため、実録物を読むような面白さを味わえました。
モデルとなった「豊田商事事件」や「投資ジャーナル事件」では、その悪辣な手口が激しく糾弾される一方で、騙された側の落ち度に関しても、喧しい意見が相次いだものです。事件の被害者に対して、「欲の皮が突っ張りすぎてるからだ」等の批判を行っていた人が本作を読んだら、胸の痛みを覚えるかもしれません。

さて、肝腎な作品の中身に関する感想ですが―、
私は、主人公の学習能力の低さ、判断力の甘さ、視野の狭さに辟易するだけで終わってしまいました。
父親の不甲斐なさが原因の不遇は致し方ないとしても、その後の人生に対しては、もう少し気骨のある生き方はできないものかと、何事かある度に、ため息をもらし続けました。
ねずみ講勧誘のサクラを演じた事を、付き合い始めたばかりの女性に話してしまう愚かしさにうんざりしたせいか、次々に訪れる主人公の不運に対しても、同情するような気分にはなれませんでした。

東野さんは、殺意は理性に司られた存在だが、殺人という行為は激情の果てに起こるもの、という事を書きたかったのでしょうか? 本作は今回(2005年9月5〜6日)で3度目の読了になりますが、未だに、殺人の門を開く瞬間の心理を理解する事ができずにいます。
コップの水が溢れ出す瞬間はさして重要ではなく、要は、コップの水が満タンになるまでの殺意が蓄積されるか否かなのだ、という事を描いた物語なのでしょうか?これ以上はネタバレになるので控えますが、私には、本格ミステリに準ずるぐらいの「意外な結末」が待っていました。

何かの弾みで田島和幸の住む世界に潜り込む事ができたら、『毒笑小説』に収録された「殺意取扱説明書」を読ませてやりたいものだと思っています。

2005年9月7日に更新
『殺人の門』の登場人物一覧
田島和幸 歯科医院を営む裕福な家で生まれるが後に破綻。
工業高校卒業後は、重機メーカー、金地金販売会社、家具販売会社等を転々とする。
倉持修:和幸の幼馴染・家業は豆腐屋 / 田島健介:和幸の父親・歯科医師 / 田島峰子:和幸の母親 / トミさん:田島家の家政婦 / ハルさん:トミが辞めた後に雇われた田島家の家政婦 / 志摩子:ホステス・田島の愛人 / 木原雅輝:和幸の中学時代の同級生 / 加藤:和幸の中学時代の同級生 / ガンさん:賭けゲーム屋 / 江尻陽子:和幸のアルバイト先の友達 / 前田:パチンコ屋の店員 / 小杉:和幸の勤務先の同僚・独身寮では相部屋 / 藤田:勤務先の先輩 / ナオコ:江尻陽子の高校の同級生 / 保住浩太朗:ホズミ・インターナショナルの会長 / 津村香苗:江尻陽子の高校の同級生 / 山下:東西商事勤務・管理職 / 石原:東西商事のセールスマン / 黒沢:東西商事のセールスレディ / 川本房江:東西商事の客 / 宮内公恵:東西商事の三角くじに当たった客 / 牧場喜久夫:東西商事の三角くじに当たった客 / 上原由希子:詐欺に遭った牧場喜久夫のために尽力する / 関口美晴:上原由希子の友人 / 関口義正:美晴の兄 / 寺岡理栄子(村岡公子):和幸が勤務する家具販売会社の客 / 本田:マンションの部屋を寺岡理栄子に無断で利用された / 中上:倉持修が投資コンサルタント会社の社員 / 佐倉洋平(ガンさん):経営コンサルタント