交通警察の夜
作品DATA
交通警察の夜
  • 出版社 実業之日本社(ISBN:4408531634)
  • 発刊日 1992/01/10
  • 文庫化 講談社文庫(ISBN:4062630168)
  • 文庫発刊日 1995/07/15
  • 重版 実業之日本社(ISBN:4062630168)
  • 重版発刊日 2002/03/10
  • Detail 内容:天使の耳/ 分離帯/ 危険な若葉/ 通りゃんせ/ 捨てないで/ 鏡の中で
    文庫タイトルは『天使の耳』
    2002年に重版された『交通警察の夜』には、作者による「10年ぶりのあとがき」が収録されている。
  • お薦め度 ☆☆☆☆
  • お気に入り指数 ☆☆☆☆
作品Outline
目の不自由な妹が、研ぎ澄まされた「奇蹟の耳」で、亡き兄の正当性の主張に挑む『天使の耳』、法律の不備に一石を投じた『分離帯』など、交通事故をテーマにした6篇が収められている。

収録作『天使の耳』が第44回日本推理作家協会賞<短編部門>、同『鏡の中で』が第45回同賞<同部門>、本書『交通警察の夜』が第46回同賞<連作短編集部門>の候補作になった。
交通課の警察官の視点を中心に描かれる、傑作揃いの連作ミステリ集。

作品Review
  • 天使の耳
    目の不自由な妹を乗せた青年の軽自動車が、深夜の交差点で、外国産車と衝突事故を起こした。相手車両の運転者と同乗者は、青年の信号無視を主張するが―。
    少女の「奇蹟の耳」には、驚嘆させられました。
    事故を担当した警察官は、「風邪でもひいたのか、ぞくりと背中が寒くなった」ようですが、私はむしろ、その可能性に爽快感を覚えたほどです。
  • 分離帯
    交通法規の不備をテーマにした作品。
    トラック運転手がハンドル操作を誤り、事故死した。目撃情報を元に捜査を進めたところが、意外な事実が判明する。
    その捨て身の告発(復讐?)に、言葉を失った読者も少なくないでしょう。
    彩子と同じ立場に置かれたとしても、こんな真似はできないと思いますが、心情には共感しました。
  • 危険な若葉
    テニススクールでコーチのアルバイトをしている大学生が、初心者マークの車を執拗に煽り、事故を誘発させた。面倒に巻き込まれることを恐れた彼は、慌ててその場を立ち去るが、それが予想だにしない結果を生む。
    若葉マークは諸刃の剣です。労わられることもあれば、福原映子のような嫌がらせを受ける場合もあります。
    大学生に対しては、イイ気味だと思ったのですが、もっと深刻な事件の真相解明を遅らせることに何の痛痒も感じない人々って―。
  • 通りゃんせ
    正月休みをガールフレンドの家で過ごした佐原雄二は、車を路上駐車して当て逃げされてしまう。泣き寝入りを覚悟していたところに、加害車両の持ち主から連絡が入った。
    私は、本作を読了以降、駐車場以外の場所で車を止めるような真似は一切しなくなりました。元々、違法な駐停車はした事がなかったのですが(と思うのですが)、短時間の停車も避けるようになりました。
    そんな心境の変化を引き起こすくらいに、強い衝撃を受けた作品だった、ということです。
  • 捨てないで
    田村真智子は、婚約者の運転する車に同乗中、他車から廃棄された空き缶が目に当たり、失明してしまう。
    婚約者の深沢伸一は、空き缶を棄てた人物を見つけ出すために、該当車両である白いボルボの持ち主を懸命に探すが―。
    本格ミステリの要素を併せ持つ作品。
    天網恢恢疎にして漏らさず、という教えがピッタリ来る物語。
    ただ、だからと言って、田村真智子の失われた視力が戻るわけではないので、溜飲を下げるまでには至りませんでした。
  • 鏡の中で
    東西化学陸上部コーチの運転する車が、バイクとの接触事故を起こし、相手を死亡させてしまう。
    現場には幾つかの不自然な状況が残されていたため、交通課勤務の織田雅之が真相解明に乗り出した。
    教訓を残す内容ですが、結末には不満を持ちました。
    不問に付したい犯罪もありますが、この場合は、全てを詳らかにして欲しかったと思います。
東野さんは、著者の一言コメントの中で、「自動車関連企業に勤めていたので、交通事故にはふつうの人より関心があると思う。何しろ社員が事故を起こすと、ものすごい騒ぎになる会社だったのだ」と述べています。
同じような環境下にあった父の会社では、事故を起こした人が自殺するという出来事もありました。
規範意識の向上は、確実に交通事故件数を減少させることができます。
普通免許を取得しておられる方には、是非ともお読みいただきたい一冊だと思いました。
2005年11月13日に更新
『交通警察の夜』の登場人物一覧
■ 天使の耳
陣内瞬介 交通課勤務の警察官
金沢巡査部長:交通課勤務の警察官 / 御厨謙三:妹を同乗させた車で事故を起こし死亡 / 御厨菜穂:謙三の妹・目が不自由・高校2年生 / 御厨友紀:謙三と菜穂の妹 / 友野和雄:フリー・アルバイター・外車を走行中に衝突事故を起こす / 畑山瑠美子:友野が運転する車の同乗者・女子大生 / 加瀬紀夫:大学生・事故現場の住人・事故の様子をビデオ撮影していた / 石田:事故を目撃したと名乗り出た学生 / 萩原:喫茶店のマスター / 酒井:三興製作所の技術者
■ 分離帯
世良一之 交通課勤務の警察官
福沢巡査部長:世良の上司・交通課勤務の警察官 / 向井恒夫:トラックの運転手・分離帯に衝突後に横転、死亡。 / 向井彩子:向井恒夫の妻・世良の高校時代の同級生 / 望月:シーマを運転中に事故の巻き添えを食う / 太田吉男:事故の目撃者・建設会社勤務 / 小林:事故現場付近にあるコンビニの利用者 / 石井:事故現場付近に黒のアウディを駐車させていた中年女性
■ 危険な若葉
三上 交通課事故処理班の警察官
篠田巡査部長:三上の上司・交通課事故処理班の警察官 / 福原映子:交通事故を起こして入院、記憶喪失状態に陥る・リハビリテーションセンターの指導員 / 福原真智子:映子の妹 / 斎藤刑事:刑事課勤務 / 森本恒夫:大学3年生・アルバイトでテニススクールのコーチをしている
■ 通りゃんせ
佐原雄二 コンピュータ・サービスの会社に勤務
尚美:OL・雄二のガールフレンド / 斎藤:交通課勤務の警察官 / 前村敏樹:佐原の車に当て逃げしたが、申し出て弁済を約束する
■ 捨てないで
深沢伸一 カメラマン
田村真智子:深沢伸一の婚約者・深沢の車に同乗中に、前を行く車両から投げ捨てられた空き缶が当たり、失明する / 斎藤和久:白いボルボを所有 / 斎藤昌枝:和久の妻・ファッションビルを経営 / 中井春美:和久の愛人 / 金田刑事:警視庁捜査一課に勤務・事件の担当捜査官 / 田所刑事:所轄署勤務・事件の担当捜査官 / 山下夫妻:斎藤家の別荘で行われたバーベキューパーティに参加
■ 鏡の中で
織田雅之 交通課勤務の警察官
靖子:織田の婚約者 /  古川巡査部長:交通課勤務の警察官・織田の上司 / 山下:交通課勤務の警察官 / 中野文貴:東西化学勤務・陸上部のコーチ・車を運転中に交差点でバイク接触し死亡させる / 萩原昭一:19歳・中野文貴の運転する車と接触し事故死する / 高倉:東西化学勤務・陸上部の監督 / 丸山助教授:スポーツ科学の研究者 / 萩原昭一: / 山本和美:東西化学陸上部所属のマラソン選手 / 堀江順子:東西化学陸上部所属のマラソン選手 / 田代由利子:東西化学陸上部所属のマラソン選手 / 三上:フリーライター