依頼人の娘
作品DATA
依頼人の娘
  • 出版社 祥伝社/NON NOVEL(ISBN:4396203195)
  • 発刊日 1990/05/01
  • 文庫化 祥伝社/NON POCHET(ISBN:4396325045)
  • 文庫発刊日 1996/06/20
  • 文庫化 角川文庫(ISBN:4043718020)
  • 文庫発刊日 2005/10/25
  • Detail 内容:偽装の夜/ 罠の中/ 依頼人の娘/ 探偵の使い方/ 薔薇とナイフ  文庫化の際に『探偵倶楽部』に改題
  • お薦め度 ☆☆☆
  • お気に入り指数 ☆☆☆
作品Outline
資産家だけを顧客対象にしたメンバー制の調査機関、「探偵倶楽部」の事件簿。表舞台に登場する調査員は二人だけで、業務内容の実態は明らかにされていないが、依頼人からの評判は良く、信頼も厚い。
二人の調査員―、男女の二人組がメンバーの前に姿を現す時の装いは、常に黒を基調としたもので統一させている。男の年齢は30代半ば、彫りの深い日本人ばなれした容貌だが、邪な心を持つ人間には少し不気味な印象を与える事もある。女の方は、20代半ばから20代後半と、年齢に関する認識では若干のずれが生じているものの、モデルが務まりそうなプロポーションを持つ美人、という評価は一致している。
二人の仕事は、難事件の解決に結び付く事も多い為、彼らの調査能力を甘く見た依頼人の中には、臍を噛む事態に追い込まれた者が存在する。

調査機関の探偵が「探偵役」を務める連作ミステリ。

作品Review
  • 偽装の夜
    大手スーパーマーケットのオーナー社長である正木藤次郎が、自身の喜寿を祝う会が開かれた夜に、縊死体となって発見された。
    彼の内妻・女婿・秘書の3人は、それぞれの思惑絡みで、藤次郎の死が露見しないように画策するが―。
    探偵は二つの「なぜ」を提示しますが、私は、「なぜ、正木藤次郎の死を隠匿するのか?」という点が気になりました。内妻以外の人物にとっては、メリットよりもデメリットの大きいように思えましたから―。
    優秀な探偵は、それらの「なぜ」を全て明らかにしてくれました。
    ただ、「ミルクを入れたならスプーンを使うのが普通だ」というのはどうでしょう!?私は、コーヒーとミルクの不均等な混ざり具合を味わいたくて、あえてスプーンを使わないのですが…。
  • 罠の中
    3人の男が「殺し」の算段をしている。事故死を装う事で意見の一致を見たが、その企みの成否は?
    収録作の中では、最も気に入っている作品です。伏線が明快なので、トリックを看破した読者は少なくないでしょうが、本当の「罠」はそこではなかった、というところに本作の魅力があります。
  • 依頼人の娘
    高校生の美幸は、母親、妙子の死に大きな衝撃を受けるが、同時に、幾つかの疑念も抱え込んだ。父・姉・母方の叔母の様子がおかしいのだ。
    母親の死は他殺と判断され、警察は家族にも事情聴取を行うが、父親の供述には嘘が含まれていた。思いあぐねた美幸は、父親がメンバーとなっている探偵倶楽部に調査を依頼する。
    刊行時の表題作であり、ミステリとしての面白さも十分なのですが、私はこの作品を苦手にしています。この母親って―。
  • 探偵の使い方
    探偵倶楽部が素行調査の対象としていた男性、安部左智男が、毒殺死体となって発見された。同じ部屋には、彼の知人である真鍋公一の遺体も横たわっている。通報者は真鍋の妻だが、彼女の「妙な話」には、捜査官の直感に訴えるものがあった。
    ラストの「どんでん返し」で、タイトルの持つ深い意味に思い至るという作品です。バブル期の、社会全体を包む軽佻浮薄な雰囲気が、巧みに投影されています。
  • 薔薇とナイフ
    遺伝子工学の権威である大原泰三の長女が何者かに殺害された。現場の状況は誤認殺人の可能性を示唆しているが―。
    探偵の推理力が冴え渡る作品です。依頼人の人となりに起因した事件という事になるのでしょうが、罪のない被害者の事を思うと胸が塞がれます。
名前さえも与えられていない探偵が主役の連作短編集ですが、本格物の醍醐味を味わえます。
歳若い依頼人に戸惑いを隠せない探偵、会員のレベルを下げすぎた事が原因の事件では、強持てな一面を披露した探偵―、 黒子に徹した探偵達の輪郭が、一作ごとに、少しずつ明らかになって行く、という魅力もあります。
2005/10/25に、角川書店より再文庫化されます。
未読の方は、これを機にご一読を!
2005年9月21日に更新
『探偵倶楽部』の登場人物一覧
(30代半ば) メンバー制調査機関「探偵倶楽部」の調査員・長身・常に黒尽くめの服装・彫りの深い顔立ち
(20代後半) メンバー制調査機関「探偵倶楽部」の調査員・常に黒尽くめの服装・美人
■ 偽装の夜
正木藤次郎:スーパーマーケットのオーナー社長 / 正木文江:藤次郎の正妻・夫とは離婚が成立しかけている / 正木高明:正木藤次郎の女婿・副社長 / 正木涼子:藤次郎の娘・高明の妻 / 正木友弘:正木藤次郎の息子・専務・涼子の異母弟 / 正木澄江:友弘の妻 / 江里子:正木藤次郎の内縁の妻 / 成田真一:正木藤次郎の秘書 / 麻子:正木家の家政婦 / 徳子:正木家の住み込みの家政婦
■ 罠の中
山上孝三:不動産業・金融業を営む / 山上道代:孝三の妻 / 浜本利彦:山上孝三の実姉の息子 / 高田百合子:浜本利彦のフィアンセ / 青木信夫:山上道代の実弟・設計事務所を経営 / 青木喜久子:信夫の妻 / 青木行雄:信夫の息子 / 青木哲子:信夫の娘 / 中山二郎:製薬会社勤務 / 中山真紀枝:二郎の妻・山上孝三の実妹 / 中山敦司:二郎の息子・大学生 / 玉枝:山上家の家政婦
■ 依頼人の娘
的場美幸:高校1年生 / 的場陽介:美幸の父親・薬品メーカーの重役 / 的場享子:美幸の姉 / 的場妙子:美幸の母親・自宅で遺体となって発見される / 大塚典子:的場妙子の実妹 / 中野修:カルチャーセンターの講師 / 古川昌子:的場妙子の知人・同じカルチャーセンターに通っていた / 田宮刑事:事件の担当捜査官 / 的場刑事:事件の担当捜査官
■ 探偵の使い方
安部芙美子:主婦 / 安部佐智男:芙美子の夫・産業機器メーカーであるアカネ工業に勤務 / 真鍋公一:大営通商に勤務・産業機器部の部長 / 真鍋秋子:公一の妻 / 井野里子:安部家の隣に住む主婦に / 笠井隆夫:クラウンホテルのフロント係 / 久保支配人:クラウンホテルに勤務 / 店長:喫茶店「ホワイト」の責任者 / ウエイトレス:喫茶店「ホワイト」の従業員 / 山本マサ子:真鍋秋子の同窓生 / 佐藤:真鍋公一の部下 / 松本:真鍋公一の部下 / 鈴木:真鍋公一の部下 / 小村刑事:事件の担当捜査官 / 武藤刑事:事件の担当捜査官
■ 薔薇とナイフ
大原泰三:和英大学の教授・理工学部長 / 大原由理子:泰三の娘 / 大原直子:泰三の娘・由理子とは母親が違う / 葉山医師:大原家の主治医 / 吉江:大原家の家政婦 / 上野:大原泰三の研究室のメンバー / 元木:大原泰三の研究室のメンバー / 神崎:大原泰三の研究室のメンバー / 立倉:北東大の研究員 / 高間刑事:事件の担当捜査官