ゲームの名は誘拐
作品DATA
ゲームの名は誘拐
  • 出版社 光文社(ISBN:4334923755)
  • 発刊日 2002/11/19
  • 文庫化 光文社(ISBN:4334738850 )
  • 文庫発刊日 2005/06/14
  • Detail 映画化  配給:東宝  映画タイトル:g@me.
    製作:フジテレビ / 東宝 / 電通 / ポニーキャニオン
    出演:藤木直人(佐久間俊介) / 仲間由紀恵(葛城樹理) / 石橋凌(葛城勝俊)
    文庫版の解説は藤木直人さん。
  • お薦め度 ☆☆☆☆
  • お気に入り指数 ☆☆☆
作品Outline
広告代理店の敏腕プランナーである佐久間俊介は、大手自動車メーカーの新車キャンペーンに携わっていたが、副社長、葛城勝俊の一声でその任から外される。憤懣やる方ない思いを抱いた俊介は、直談判を思い立ち、葛城邸に赴いた。要塞を思わせる巨大な屋敷を目の当たりにして意気消沈する俊介だが、そこで、葛城の娘が家出を敢行する場面に遭遇した。 俊介は、この出来事を、葛城に一矢報いる手段として利用する事を決意する。
家庭不和が原因で家を出たと言う葛城家の令嬢、樹理に、俊介は、「ゲームをやってみないか」と持ち掛けた。樹理が何者かに誘拐された事とする虚構の遊技、そのゲームとは、狂言誘拐であった。

主人公の一視点で語り継がれる、長編サスペンス。予想だにしない結末が用意されている。

作品Review
「著者の一言コメント」には「誘拐を中心に据えた作品は初めてである」と記されていますが、そんな事はありません。『毒笑小説』の中でも、権力・財力・知力に恵まれた老人達が引き起こす誘拐劇を扱っています。ただ、こちらは短編、しかもお笑い、同列に語るには無理があるという事なのかもしれませんが…。

本作は、刊行から僅か1年で映画化されました。
従って、映画を観てから原作を読んだ、という方も結構多いのではないかと思われます。 そしてその結果、想像していたものとはかけ離れた内容であった事に、仰天されたでしょう。
東野さんは、脚本に注文を付けない原作者のためか、どの映像化作品にもかなりな変更箇所が存在します。特に『g@me.』は、横綱級の改変が施されていました。終盤は、全く違う物語を観ているかのようでした。
と―、こういう書き方をすると、『g@me.』の出来に不満を持っているかのように思われるかもしれませんが、それは違います。寧ろ逆です。

私は東野圭吾さんの大ファンですが、『ゲームの名は誘拐』からは、十分な満足感を得る事ができませんでした。
広告代理店勤務・敏腕プランナー・頭脳明晰・長身痩躯・ハンサム・付き合う女もカタカナ職業・車はツーシーターの限定車…、まるで一昔前の、トレンディドラマの世界です。軽佻浮薄の象徴とも思える設定なので、物語の世界に溶け込むという「初めの一歩」でつまづいてしまいました。
ところがそこに藤木直人さんを配するだけで、この作品の様相がガラリと変質しました。 初めて読んだ時には退屈な思いが先行した本作が、映画のキャスティングを知った後で読み返すと、緻密でありながらも躍動感溢れる、蠱惑的な傑作ミステリと思えるようになったのです。
『g@me』を鑑賞後にもう一度読み返すと、重要人物であるにも関わらず、魅力に乏しかった樹理までが、輝きを放ち始めました。
映像化によるキャスティングが、原作の持つ本来の素晴らしさを減殺してしまうケースも少なくありませんが、『ゲームの名は誘拐』に関しては、好ましい相乗効果が得られたのではないかと思っています。

ところで、佐久間が作った誘拐ゲームの出来はどの程度のものでしょう。
私は、電話やメールの使い方に、不安を覚えました。
フリーメールを使用しても送信元の情報は残ってしまいます。捜査権を持つ人間が介入すれば、容易に身元が判明してしまうのではないでしょうか?
電話に関しては、被害者役の裏切りがない限りは大きな不安材料にはなりません。ただ、全てに万全を期すのであれば、ここももう少し慎重であって欲しかったと思います。

『青春のデスマスク』―、この作品の原題です。
『ゲームの名は誘拐』への改題は成功だったと思いますが、作中で語られるコンピュータゲーム、『青春のマスク』には興味をそそられました。RPGが苦手な私でも、『青春のマスク』なら楽しめそうな気がします。
そんな事もあって、『g@me.』では『青春のマスク』のシーンに注目していたのですが、プレゼンテーションの凝った作りに較べると、手抜きが目立ちました。前者は製作に関わった電通の本業なので、当然と言えば当然なのですが…。

本当の勝者をサラリと語ったラストの一行が、印象的な作品でした。

2005年8月23日に更新
『ゲームの名は誘拐』登場人物一覧
佐久間俊介 広告代理店(サイバープラン)勤務
敏腕プランナー
葛城勝俊:日星自動車の副社長 / 葛城樹理:葛城勝俊の長女 / 葛城千春:葛城勝俊の次女 / サキ:葛城家の家政婦 / 小塚:サイバープランの社長 / 杉本:サイバープランのプランナー / 上野淳子:サイバープランの社員 / 山本:サイバープランの社員 / マキ:モデルの卵・佐久間のガールフレンド / 中村:日星自動車販売向島店の責任者 / 湯口大介:テレビ局勤務