探偵ガリレオ
作品DATA
探偵ガリレオ
  • 出版社 文藝春秋社(ISBN:4163177205)
  • 発刊日 1998/05/30
  • 文庫化 文春文庫(ISBN:4167110075)
  • 文庫発刊日 2002/02/10
  • Detail 内容: 燃える(もえる)/ 転写る(うつる)/ 壊死る(くさる)/ 爆ぜる(はぜる)/ 離脱る(ぬける)
    文庫の解説はガリレオのモデルである佐野史郎さん
  • お薦め度 ☆☆☆☆
  • お気に入り指数 ☆☆☆☆
作品Outline
帝都大学理工学部物理学科助教授の湯川学が、科学者の視点から難解な謎に挑む連作ミステリ。

警視庁捜査一課の草薙俊介は、今日も、在学中には一度も足を踏み入れる事のなかった理工学部へと向かっている。理系オンチの彼は、四階建てのその建物を眺めるだけでも気持ちが萎縮してしまうが、 常識の範疇を逸脱した怪事件の謎を解くには、中に居る天才科学者の知恵を借りるしかないからだ。

毛髪から急に火が出て焼死した少年・廃棄物の処理場と化した池に浮かぶ金属製のデスマスク・皮膚の一部が瞬時に壊死したと思われる、不可思議な遺体・海中から吹き上がった火柱に呑み込まれた主婦・「幽体離脱」を思わせる、病弱な少年の不思議な体験談―、
「ガリレオ先生」こと湯川学は、どんな推理を披露してくれるであろうか!?

作品Review
著者は、『探偵ガリレオ』を上梓した際に以下のような言葉を残しています。
自分の持っている理系の知識を駆使して小説を書いてみたいと思っていた。それを実行したのが本作品。登場してくる科学知識はすべて既存のものだが、一般の人には馴染みが少ないだろう。
理論的には可能だが、実行可能かどうかは検証していない。当たり前である。検証するには人を殺さねばならない。
文系の人には意味不明なところも多いだろうし、理系の人間だって、自分の専門外のところはよくわからないかもしれない。それでもストーリーを楽しめるように書いたつもりである。
作者の狙い通りの作品集と言えるでしょう。確かに、理解不能な箇所が数多く存在しますが、展開の面白さに魅せられて、楽しく読み進める事ができます。文系の人には、「少し利口になった気がする」という、望外のおまけも付いて来ます。

  • 燃える(もえる)
    オートバイの爆音と嬌声で周辺住民の不興を買っていた若者の1人が焼死した。事態の顛末を見ていた仲間は、「あいつの後ろの髪の毛から急に火が出た」と話している。一部のマスコミはプラズマとよるものと推理したが…。
    湯川学が解決した最初の事件です。この時点では、まだ「ガリレオ」というニックネームは生まれていません。
    加害者への同情を余儀なくされる作品なので、ガリレオ先生の活躍が嬉しくもあり悲しくもある、と言ったところでしょうか。
  • 転写る(うつる)
    中学校の文化祭で展示されていた石膏像は、出展者が、池で見つけた金属性のデスマスクを元に作られたものであった。後日、その池からは、行方不明となっていた歯科医の遺体も発見される。デスマスクは歯科医のものと判明したが、それがいかにして作られたかは不明のままだった。
    アルミ片・黒い皮膜に覆われた電気コード・長さ1メートルほどの軽量鉄骨の存在から、湯川学は、デスマスク製造の謎を解き明かします。結末部で飛び出す科学者の冗談も興味深いところ―。
  • 壊死る(くさる)
    スーパーマーケットを経営する男の遺体が、自宅の浴室内から発見された。男の右胸には直径10p程度の痣に似た痕があり、解剖の結果、その痕は、皮膚が壊死したために出来たものだと判明する。
    この章に登場する「殺人トリック」は、前二章に較べればやや馴染み深いと思えるものが登場します。科学には無縁な人間にでも実行できそうにも思えます。模倣犯が登場しませんように…。
  • 爆ぜる(はぜる)
    神奈川の海水浴場で、轟音と共に原因不明の火柱が立ち登り、遊びに来ていた主婦が死亡する。その火柱は、見ていた者の目には、海中から突き出るように姿を現した、と映った。
    科学者はこんな事もできてしまうのかと、身がすくむ思いを余儀なくされる物語です。事件の背景には、高速増殖炉「もんじゅ」で起ったトラブルが関連する事があるせいか、短編とは思えない重厚感が漂う作品になっています。
  • 離脱る(ぬける)
    化粧品メーカーに勤めるOLが自宅で殺害され、彼女と交際のあった保険の外交員に嫌疑が掛かるが、その外交員のアリバイを証明する人間が現れた。小学二年生の少年が、「幽体離脱」によって、外交員の車を認識したという。少年の父親がマスコミに情報提供したために、ちょっとした騒動へと発展するが―。
    ガリレオというニックネームは、この章で初めて登場します。名付け親は草薙刑事の上司である間宮警部で、難事件解決のための助言を授けてくれる湯川に対し、敬意をこめて「ガリレオ先生」と呼びました。
    この章でも、幽体離脱を思わせる怪現象の謎を、ガリレオ先生こと湯川学が鮮やかに解き明かします。子供ぎらいを標榜する湯川の身に起る怪現象も見ものです。
ガリレオシリーズには、本作の他に2作品、『予知夢』『容疑者Xの献身』が刊行されています。
それぞれの事件に関連性はありませんが、登場人物が加齢して行くので、発行年度順に読む方が、妙味が増すのではないかと思われます。
2005年9月14日に更新
探偵ガリレオのProfile
  • 姓名 湯川学
  • 職業 帝都大学理工学部物理学科助教授
  • 身体的特徴 長身・痩躯で、足が長い。俳優の佐野史郎さんに似た容貌。眼鏡を使用しているが、視力は不明。
  • 湯川学が解決した事件を紹介した書籍
    ・『探偵ガリレオ(ISBN:4163177205)』
    ・『予知夢(ISBN:4163192905)』
    ・『容疑者Xの献身(ISBN:4163238603)』
  • 人物評定 天才的な頭脳を持つが、運動能力にも長けている。バドミントン部ではエースだった。
    非科学的で凡庸な友人(草薙俊介)に対しては、皮肉交じりの発言が多いが、優しい一面も併せ持つ。と言うよりは寧ろ、根底にある人の好さを隠そうとして、COOLで狷介な人物を装っているふしもある。
    白衣を脱げば、どこから見ても、物理学者とは思えない雰囲気を醸し出す。とある日の装いは、アルマーニの黒いシャツに、黒いサングラスだった。学者に見えないどころか、堅気の人間にも見えそうにもないところが凄い。
  • ガリレオの由来 捜査一課の人々の呼称であり、広範囲に親しまれている愛称、というような性格のものではない。
    警視庁捜査一課の草薙俊介は、「超常現象?」と疑いたくなるような事件に出くわす事が多いが、社会学部出身の彼には歯が立たない分野である。そこで、大学時代の部活(バドミントン部)仲間だった湯川学の知恵を借りて、不可思議な事件を科学的に解決するというパターンが出来上がった。
    餅は餅屋と思ったのかどうか、草薙の上司は、一般人の介入を疎んじるどころか、湯川を「ガリレオ先生」と祭り上げて頼る事とした。
※ 本作の「燃える(もえる)」で、およそ3年ぶりの再会を果たした湯川学と草薙俊介は、素晴らしいコンビネーションプレイで、数々の難事件を解決して行く事になります。
シリーズ物にしては珍しく、彼らは歳を重ねて行きますが、2005年に上梓された『容疑者Xの献身』に至っても、艶っぽい話は全く聞こえて来ません。いささか、気掛かりな事態ではあります。
『探偵ガリレオ』の登場人物一覧
湯川学(34歳) 帝都大学理工学部物理学科助教授
通称ガリレオ先生
草薙俊介(34歳) 警視庁捜査一課の刑事・湯川の友人
帝都大学社会学部出身
間宮警部:警視庁捜査一課勤務・草薙俊介の上司・「ガリレオ」というニックネームの名付け親 / 小塚刑事:警視庁捜査一課勤務・草薙俊介の同僚 / 根岸刑事:警視庁捜査一課勤務・草薙俊介の後輩 / 弓削刑事:警視庁捜査一課勤務・草薙俊介の先輩
■ 燃える(もえる)
向井和彦:19歳の無職少年 / 山下良介:和彦の遊び仲間・火災で死亡 / 金森龍男:火災現場近くのアパートの住人 / 前島一之:火災現場近くのアパートの住人 / 赤いトレーナーを着た少女:小学校に上がったか上がらないかの年齢・事件当夜に「赤い線」を見たと主張する
■ 転写る(うつる)
藤本孝夫:中学生・ひょうたん池で金属製のマスクを拾う / 山辺昭彦:藤本孝夫の同級生 / 斉藤浩二:藤本孝夫の同級生 / : / 森下百合:草薙俊介の実姉 / 森下美砂:森下百合の娘・藤本孝夫達と同じ中学に通う / 柿本進一:歯科医・行方不明になった後、遺体で発見される / 柿本良子:柿本進一の妹・金属製のマスクから作られた石膏像が兄に似ていると主張する / 小野田宏美:藤本孝夫らが通う中学の音楽教師・柿本良子の友人 / 柿本昌代:柿本進一の妻 / 笹岡寛久:柿本進一の患者
■ 壊死る(くさる)
高橋邦夫:スーパーマーケットの経営者・自宅浴室で死亡しているところを発見される / 高橋紀之:邦夫の息子・大学生 / 内藤聡美:「東西電機」の事務職・夜は銀座のバーでホステスのアルバイトをしている・高橋邦夫の愛人 / 田上昇一:「東西電機」の現場作業員・内藤聡美に好意を持っている / 伊勢課長:「東西電機」に勤務 / 小野寺班長:「東西電機」に勤務 / 橋本妙子:「東西電機」に勤務・内藤聡美の同僚 / 松山文彦:「東西電機」の下請け会社の跡取り息子
■ 爆ぜる(はぜる)
梅津律子:主婦・帝都大学学生課での勤務歴を持つ・海水浴中に不審死を遂げる / 梅津尚彦:律子の夫・会社員 / 加藤敏夫:「坂上ハイツ」を管理する不動産屋 / 藤川雄一:「坂上ハイツ」の住人・自宅室内で他殺体となって発見される・帝都大学理工学部エネルギー工学科の出身 / 松田武久:帝都大学理工学部エネルギー工学科第五研究室の助手 / 横森教授:帝都大学理工学部エネルギー工学科第五研究室の教授 / 木島文夫:帝都大学理工学部エネルギー工学科の教授・エネルギー工学科の最高権力者 / 長江秀樹:土産物店の店員
■ 離脱る(ぬける)
上村宏:フリーライター / 上村忠広:小学二年生・宏の息子・生まれつき病弱な体質 / 竹田亮太:上村忠広のクラスメイト / 竹田幸恵:亮太の母親・パン屋を経営 / 長塚多恵子:化粧品メーカーに勤務するOL・自宅室内で他殺体となって発見される / 栗原信彦:保険会社の外交員 / 中上工場長:食品工場の責任者 / 吉岡:リース会社の重役・長塚多恵子の元上司