同級生
作品DATA
同級生 出版社 祥伝社(ISBN:4396630506)
発刊日 1993/02/10
文庫化 講談社文庫(ISBN:4062633426)
文庫発刊日 1996/08/15
Detail 文庫の解説は野間美由紀さん
お薦め度 ☆☆☆☆☆
お気に入り指数 ☆☆☆☆
作品Outline
同級生の宮前由紀子が死んだ。彼女は、俺の子供を妊娠していた。
俺は、逃避行動の一環として彼女を抱いた。相手は誰でも良かった。感情は後から付いてきたが、今でも尚、由紀子に抱いていたものを愛情と言える自信はない。だから俺は、俺を信じていた彼女の思いに応えてやりたいと思う。恋人を妊娠させ死なれた男として、周囲から面罵される道を選ぶ。そして、由紀子の死の引き金となったものを明確にして行こうと思う。

修文館高校野球部キャプテンの西原荘一は、同級生の事故死の謎を解明するための行動を起こした。その矢先に、事故への関与が噂された女教師の絞殺死体が発見される。荘一の、由紀子への愛情が本物だと思っている周囲からは、彼を犯人と誤解する雰囲気が生まれた。
真犯人はどこに潜んでいるのか!?

『放課後』以来の本格学園ミステリ。

作品Review
東野ファンを標榜しながらこんな事を書くと、甚だしく嘘くさいのですが、私が初めて体験した国産ミステリは、 小峰元さんの『アルキメデスは手を汚さない』でした。そのせいか、学園ミステリには推理小説の原風景があるような気分にさせられます。
登場人物達を仰ぎ見る状態、或いは等身大の存在として捉えていた時代に較べれば、その魅力も幾らか色褪せてしまいましたが、青い正義を素直に楽しめる世界というのは、ここにしか存在しないような気がしています。

この物語は、女子高校生の交通事故死という、痛ましい出来事から幕を開けます。
思春期特有の激情に押し流されて、同級生を妊娠させてしまった主人公―、
相手の女子高生は、産婦人科病院を訪問した帰り道で事故に遭い、亡くなってしまいました。

10代の若者に暴走は付き物ですが、看過できる暴走と、許し難い暴走があります。西原荘一に関しては、後者と映りました。
従って、序盤の主人公からは、その潔い言動や贖罪のための真摯な取り組みを見ても、共感めいた感情が沸いて来ませんでした。
でもそれは、大人の読者の存在を考慮に入れた、ある種の伏線だったのかもしれません。
中盤以降から、西原荘一の仮面が徐々に剥ぎ取られて行きますが、その素顔の中に、彼の魅力――、本作の魅力が敷き詰められていました。

東野圭吾作品には、ラスト一行に深い感銘を受ける場合が少なくありませんが、本作にも珠玉のラストシーンが用意されています。
青い正義を全うした主人公達の、希望・浄罪・誠意・友愛・伸展を内包した「○○○さ」という台詞に、清々しい「してやられた」感を覚えました。

人気作家である東野圭吾さんには、「原点」「代表作」「記念碑的作品」「ターニングポイント」と称される作品が数多く存在しますが、作者本人は、本作を「最大のターニングポイント」と語っています(註 「自他共に認めるターニングポイント」は『秘密』)。
公式ホームページ(現在は運用されていない)の「著者の一言コメント」・『野性時代Vol.27』に特集された「東野圭吾自身が語る全作品解説」には、本書執筆時の苦労の多さと、それによって、その後の作家生活を支える天啓を得た経緯が紹介されています。『同級生』の「あとがき」にも、僅かですが触れられています。

東野さんには、もう学園ミステリを書く余力(若さ?)が残されていないようですが、「34歳のおっさん」が書いた瑞々しい青春小説――『同級生』は、読み手一人一人に、固有の感慨や感動を与えてくれる名作ではないかと思います。

2006年7月7日に更新
『同級生』の登場人物一覧
西原荘一(17〜18歳) 修文館高校3年生
野球部のキャプテン
宮前由希子:修文館高校3年生・野球部のマネージャー・交通事故で死亡 / 楢崎薫:修文館高校3年生・野球部のマネージャー / 川合一正:修文館高校3年生・野球部の投手 / 吉岡良介:修文館高校3年生・野球部の捕手 / 水村緋絽子:修文館高校3年生・天文部の部長・父親は東西電機の専務 / 中野:修文館高校2年生 / 篠田進:修文館高校3年生・素行不良が問題化した事がある / 近藤:修文館高校3年生・野球部員 / 中尾:修文館高校3年生・西原荘一のクラスメイト・校内で発生した変死事件の第一発見者 / 吉田:修文館高校3年生・西原荘一のクラスメイト / 石部教諭:修文館高校勤務・西原荘一のクラス担任・国語教師 / 山田教諭:修文館高校勤務・宮前由希子のクラスの副担任 / 灰藤教諭:修文館高校勤務・生徒指導部 / 御崎藤江教諭:修文館高校勤務・生徒指導部 / 長岡教諭:修文館高校勤務・野球部の監督・数学教師 / 坂上教諭:修文館高校勤務・川合一正のクラス担任・物理教師 / 古谷教諭:修文館高校勤務・養護教師 / 西原春美:荘一の妹・生まれつきの心臓疾患がある / 西原夫妻:荘一の両親・父親は東西電機の下請け工場を経営 / 宮前夫妻:由希子の両親 / 水村俊彦:水村緋絽子の父親・東西電機の専務 / 佐山刑事:県警本部捜査一課勤務・事件の担当捜査官 / 溝口巡査部長:所轄署勤務・事件の担当捜査官