毒笑小説
作品DATA
毒笑小説
  • 出版社 集英社(ISBN:4087742075)
  • 発刊日 1996/07/26
  • 文庫化 集英社文庫(ISBN:408747013X)
  • 文庫発刊日 1999/02/19
  • Detail 巻末に作者と京極夏彦さんの対談
    内容: 誘拐天国/ エンジェル/ 手作りマダム/ マニュアル警察/ ホームアローンじいさん/ 花婿人形/ 女流作家/ 殺意取扱説明書/ つぐない/ 栄光の証言/ 本格推理関連グッズ鑑定ショー/ 誘拐電話網
  • お薦め度 ☆☆☆☆
  • お気に入り指数 ☆☆☆☆
作品Outline
ブラックジョークを敷き詰めた傑作短編集。

巻末には、作者と京極夏彦さんの特別対談が用意されている。 両氏の、「笑い」に対する思い入れ・薀蓄・世情批判が、情熱的に語られるだけでなく、『秘密』執筆時の隠された事情までが披露されている。

作品Review
  • 誘拐天国
    孫と存分に遊ぶ時間が欲しいと願う福富のために、宝船と銭箱は「狂言誘拐」を思い立った。権力・財力・知力に恵まれた老人達が巻き起こす痛快娯楽犯罪の顛末は如何に?
    身代金が「たったの1億円」と激昂する福富、「福富が怒るのも当然だ」という銭箱、「気持ちはわかるが…」となだめる宝船。3人の大金持ちの豪気なやり取りを眺めるだけでも、楽しい気分にさせられる物語です。
    天藤真さんの『大誘拐』と、岡嶋二人さんの『99%の誘拐』を足して割ったような作品、とまで言っては、誉め過ぎになるのでしょうか?
  • エンジェル
    天使に似た外観を持つ新生物が発見された。瞬く間に大層な人気者となった「エンジェル」だが―。
    日本の食文化はこれ程までに前衛的でしょうか!?私なら、飼って楽しむ範囲で留まりそうです。
  • 手作りマダム
    定例パーティで部下の妻達に手作り品を振る舞う重役夫人だが、その出来映えはいつの場合でも劣悪な為、周囲の苦悩は大きい。
    悪意があるものなら、それなりの対応策を講じることができますが、親切心から生まれた迷惑行為の対応は実に厄介です。上下関係などなくても、ここに登場する部下の妻達のような対応を取る人は、少なくないでしょう。
    もしも、自分が重役夫人のような人物と遭遇してしまったら、「とても面白い本がありますの」と、『毒笑小説』を薦めてみる!?
  • マニュアル警察
    妻を殺害した男が最寄りの警察署に自首するが、徹底したマニュアル化が図られているために、話が先に進まない。
    先日お世話になった病院で、自首した男と似たような体験をしました。
    薬剤師さんの指示に従って行動したのですが、それは通常業務からは外れたものだったらしく、取次ぎを頼んだ窓口の女性は、「ここではそんなことはやっていない」を繰り返すばかり―、本作を思い出してしまい、笑いを堪えるのに往生しました。
    手順を遵守することで生まれるトラブルよりも、従わないことで生まれるトラブルの方が、件数が多く深刻度も高いでしょうから、マニュアル重視の姿勢は、今後、更に強固なものとなって行くのでしょう。
    煩わしいこともたくさんありますが、私は、どちらかといえば、マニュアル主義に肯定的なタイプです。

    本作は、1999年に、フジテレビ「世にも奇妙な物語 秋の特別編」でドラマ化されました。

  • ホームアローンじいさん
    留守居を快諾した伸太郎には、ちょっとした企みがあった。孫が所有するアダルトビデオを視聴しようというものである。ところが、操作法が分からない。困惑する伸太郎。
    伸太郎の現役時代の職業が教師、という辺りに、東野さんならではの毒が含まれています。 物語が終わった後に繰り広げられる騒動を想像すると、可笑しくもあり切なくもあり―。
  • 花婿人形
    旧家の跡取り息子である茂秋は、母親の指示がなければ何もできな哀れな人間だ。その性格が、自身の結婚当日に、大きな悲劇(喜劇?)をもたらしてしまった。
    マザコン少年・青年には、気立ての良い人が多いような気がします。自分で決断する術さえ覚えれば、とても素敵な人物に変貌できるのですが…。
  • 女流作家
    人気女流作家がお産の為に休業したが、復帰後にも姿を見せなくなってしまった。入稿の遅延は解消したものの、担当編集者には釈然としない思いが膨らんで行く。
    子供が成長したら、どんな風に言いくるめるのだろう?などと、余計な心配をする私には、東野さんの「笑い」の精神を理解する資質が欠落しているのかもしれません。
  • 殺意取扱説明書
    殺意取扱説明書という妙なタイトルが付いた本を買った「私」は、中身を見て驚いた。本物の取扱説明書だったからだ。
    どうやらこれは、取扱説明書の体裁を整えた、殺意を減殺させる為の本みたいです。『どちらかが彼女を殺した』のパロディのようにも見えますが、実際のところはどうなのでしょう?
  • つぐない
    ピアノ教師の実穂は、少し変わったレッスン生を受け持つ事になった。初老の男であるその練習生は、音楽的素養が皆無な上に、一般的な知識も持ち合わせていなかった。彼はなぜ、ピアノを始める気になったのか?
    収録作の中では、最も気に入っている作品。東野さんの全短篇との比較でも、Best3に入る秀作だと思います。
    『宿命』を読んだことがある人ならば、「つぐない」の意味もその対象も、ある程度の察しが付いたかもしれません。(念入りなことに、栗林が診察を受けた病院は統和医科大学でした)
    予想通りの展開であったにも関わらず、思わずホロリとさせられました。
  • 栄光の証言
    口が重く、お世辞のひとつも言えない陰気な男と、周囲に疎んじられてきた孝三が、突如として、栄光の日々(?)を送る事になる。殺人事件の目撃者になったからだ。尋ねられもしないのに、吹聴して回る孝三―。
    口が軽く、真実のひとつも吐露できない嘘つきな男になるよりは、元のままの方がましだったかもしれません。
  • 本格推理関連グッズ鑑定ショー
    「本格推理関連グッズ鑑定ショー」に、天下一大五郎の初手柄となった「壁神家殺人事件」の心張り棒が持ち込まれた。会場は盛り上がったが、鑑定士の壁神辰哉の評価額は零円。だが、そこには、意外な真実が隠されていた。
    『毒笑小説』の中では珍しいミステリ仕立て。「壁神家殺人事件」の真犯人が変更されてしまうのだから、何とも思い切ったことをしたものです。
    本格推理関連グッズ鑑定ショーの司会者として、東野圭吾さんのファンとしてもよく知られる、ミステリ作家の黒田研二さんが登場します。
  • 誘拐電話網
    カワシマ」の元に、誘拐犯と名乗る男から身代金を要求する電話が入った。誘拐した子供の親に要求するのは忍びないので、金を支払わせる相手を無作為で選んだと言う。責任転嫁をしたい「カワシマ」は―。
    覚えのない番号の電話には苗字を名乗らないようにしています。「非通知」の場合には、受話器を上げないので、誘拐電話網の輪に組み込まれる心配はなさそうです。
2005年11月27日に更新
『毒笑小説』の登場人物一覧
■ 誘拐天国
宝船満太郎
銭箱大吉
福富豊作
国内屈指の資産家
政財官界に多大な発言力を持つ
福富政子:福富豊作の娘・福富財閥の現代表 / 福富健太:政子の長男・福富財閥の後継者・金満館幼稚園の園児 / 福富良夫:福富豊作の女婿 / 野田:県警本部長 / 月山一郎:金満館幼稚園の園児・健太の友達 / 火村亜矢:金満館幼稚園の園児・健太の友達 / ユカリ:金満館幼稚園の園児・健太の友達
■ エンジェル
氏名を持つ人物は登場しいない
■ 手作りマダム
安西静子 主婦
夫はABC電機の研究開発部に所属
富岡貞子:夫はABC電機の重役 / 鳥飼フミエ:夫はABC電機のIC設計課長 / 町田淳子:夫はABC電機勤務 / 古川よしえ:夫はABC電機勤務 / 田中ヒロミ:夫はABC電機勤務 / 安西史明:安西静子の夫
■ マニュアル警察
只野一郎 「自首」をしたいが果たせない男
只野花子:只野一郎の妻・自宅で夫に殺害される
■ ホームアローンじいさん
伸太郎 留守番を引き受けた老人
元教師
貞男:伸太郎の息子 / 孝子:貞男の妻 / 信彦:伸太郎の孫 / 泥棒:プロではないが、空き巣狙いに成功した経験を持つ
■ 花婿人形
御茶之小路茂秋 御茶之小路家の跡取り息子
新郎
御茶之小路要子:茂秋の母親・御茶之小路家の12代当主 / 山田弥生:新婦
■ 女流作家
カワシマ 四葉社の編集者
宮岸玲子:女流作家 / カトンボ:宮岸玲子の夫 / オダカ:四葉社の編集長
■ 殺意取扱説明書
OL
矢口育美:「私」の大学時代の友人 / 緒方洋一:「私」の元恋人
■ つぐない
藤井実穂 ピアノ教師
栗林:家電機器メーカーに勤務・藤井実穂のレッスン生 / 栗林ユカ:栗林の娘・高校生 / 栗林の妻:夫のピアノレッスンに不満を抱いている / 橋本:栗林の部下 / 真鍋浩三:統和医科大学第九教室教授&
■ 栄光の証言
正木孝三 金属加工会社に勤務
大家:正木孝三が住むアパートの大家 / 下田春吉:中華料理店経営・何者かに殺害される / 山下一雄:下田春吉の従弟・下田春吉殺害容疑で逮捕される
■ 本格推理関連グッズ鑑定ショー
山田史朗 「本格推理関連グッズ鑑定ショー」で
心張り棒を出品
山田鉄吉:『名探偵の掟――第一章 密室宣言---トリックの王様』の第一発見者 / 黒田研二:「本格推理関連グッズ鑑定ショー」の司会者 / 白山ありさ:「本格推理関連グッズ鑑定ショー」のアシスタント / 壁神辰哉:特別鑑定士 / 綾小路道彦:レギュラー鑑定士 / 本山元雄:「料亭ちびたけ殺人事件」の凶器となった一万円札を出品
■ 誘拐電話網
カワシマ 身代金を立替払いを強要される
スズキ:カワシマから誘拐電話網を回された主婦 / ヤマダ容疑者:誘拐犯 / オオハシ:ヤマダが身代金を立替払いを命じた相手