ブルータスの心臓
作品DATA
ブルータスの心臓 出版社 光文社/カッパノベルス(ISBN:433402839X)
発刊日 1989/10/30
文庫化 光文社文庫(ISBN:433471739X)
文庫発刊日 1993/08/20
Detail 文庫化の際に『ブルータスの心臓-完全犯罪殺人リレー-』と改題
お薦め度 ☆☆☆
お気に入り指数 ☆☆☆
作品Outline
産業機器メーカーで人工知能ロボットの開発に携わる末永拓也が窮地に陥った。妊娠した愛人、雨宮康子が、掻爬を拒んだためである。
上昇志向の強い拓也は、オーナーの女婿になりたいと言う目論見を持っていた。事態の露見は、野望の頓挫を意味する。
そんな中、打開策を見出せない状態に焦りを覚えていた拓也に、意外な提案を持ち掛ける者が現れた。共同作業で康子を殺害しようと言うのである。男達の、完全犯罪殺人リレーがスタートした。

犯人自身が、思い掛けない展開と意外な結末に驚愕する本格長編推理。

作品Review
『ブルータスの心臓』はバブル期に書かれた作品です。男も女も、金や物への執着が異常に強い時代でした。主人公程の高い到達点は望まなくても、欲望には忠実であるべきと言う風潮が蔓延していました。計算高さは賢さの証しでもありました。平凡な幸せだけで満足!と口にするのは、無能な人間の言い訳と受け止められる傾向にもありました。
世の中の様相がすっかり変容したこの時代に読むと、滑稽に映る場面が少なくありませんが…。

この物語は、上昇志向が極端に強い主人公が、自分の前途を脅かす女性の抹殺を思い立つところから始まります。
ミステリにはありがちな設定、という思いが過ぎりますが、次の場面では、それが早合点であったことを思い知らされます。
姦計に足元をすくわれた男性は、主人公だけではなかったのです。 かくして、男達の逆襲、完全犯罪殺人リレーの幕が切って落とされることになります。

意表を突く殺害計画とその後の予期せぬ展開・あざとい男女が繰り広げる我執にまみれた駆け引き・垣間見える人間性軽視(実利優先主義)、そして意外な結末etc――、
本作には、娯楽小説の醍醐味がぎっしりと詰め込まれています。
Nシステムが導入された現代では通用しないトリックが存在しますし、副次的な要素となった工場の安全管理体制にも大きな変革がもたらされていますが、1989年に上梓された作品であることを念頭に入れて読めば、とても面白い作品、という印象が残るのではないかと思います。

尤も、私自身は、十分な満足感を得た、という状態には至れませんでした。
肩入れできる登場人物が存在しなかったので、作品への感情移入が叶わなかったのです。^^
でもこれは、和菓子は好きだけどケーキ類は苦手、と言ってるようなものなので、本作を未読の方には看過願いたいと思います。

本作にも、高級宝飾店「華屋」が登場します。
『香子の夢-コンパニオン殺人事件-』『幻夜』との関連性は不明ですが、帝都大学・日星自動車・統和医科大学等、複数の作品に同じ固有名詞が使われているのを見つけると、アナザーストーリーに出会ったようで、わくわくしてしまいます。
東野さんが、短編の中ででも、遊んでくださると嬉しいのですが…。

  • 「華屋」の店先で鉢合わせする小田香子(『ウインクで乾杯』の主人公)・仁科星子(本作の登場人物)・新海美冬(『幻夜』の主人公)。
  • 「首ふるピエロ」で相席し、歓談する加賀恭一郎(『悪意』他の主人公)と津村光平(『学生街の殺人』の主人公)。
  • 日星自動車の社長に就任した葛城勝俊(『ゲームの名は誘拐』の登場人物)から発破をかけられる、現日星自動車スキー部監督、元ジャンパーの杉江翔(『鳥人計画』の登場人物)。
  • 統和医科大学で、担当医師になった瓜生晃彦(『宿命』の準主役)に、発表会の様子を語る栗林(『毒笑小説』の収録作、『つぐない』の登場人物)。
  • 帝都大学アメフト部が登場する試合観戦にやって来た湯川学(『容疑者Xの献身』他の主人公)と西脇哲朗(『片想い』の主人公)。その様子を中継するテレビの前では、栗原典子(『白夜行』の登場人物)・吉倉助教授(『天空の蜂』の登場人物)・梅津正芳教授(『分身』の登場人物)・中斎教授(『美しき凶器』の登場人物)の姿もある。
2006年6月25日に更新
『放課後』の登場人物一覧
末永拓也(32〜33歳) 産業機器メーカーMM重工業勤務
職務は人工知能ロボットの研究開発
仁科敏樹:MM重工業創業者の息子・専務取締役 / 仁科清美:故人・仁科敏樹の後妻・旧姓は山本 / 仁科直樹:仁科敏樹の息子・MM重工業開発企画室長nbsp;/ 仁科沙織:仁科敏樹の長女 / 仁科星子:仁科敏樹の次女 / 宗方伸一:仁科敏樹の長女の夫・航空機事業部の研究主任 / 橋本敦司:MM重工業勤務・職務は極限ロボットの開発 / 鈴木係長:MM重工業勤務・橋本敦司の上司 / 雨宮康子:MM重工業役員室勤務 / 萩原利夫:MM重工業開発企画室副室長 / 笠井:MM重工業開発企画室の課員 / 中森弓恵:MM重工業開発企画室勤務 / nbsp;/ 朝野朋子:MM重工業勤務・中森弓恵の同期酒井悟郎: MM重工業工場勤務 / 高島勇二:MM重工業工場勤務 / 片平:MM重工業・試作工場勤務 / 長瀬:MM重工業勤務・生産技術部員 / 中野秋代:MM重工業勤務・人事部係長 / 光井芙美子:仁科敏樹の前妻・仁科直樹の実母 / 杉村ミチ子:生命保険会社勤務・雨宮康子の学生時代の友人 / 奥村豊:名西工機勤務・営業課長 / 山中波江:光井芙美子の実妹 / 安藤助教授:東都大法医学研究室勤務 / 佐山総一:警視庁捜査一課勤務・事件の担当捜査官 / 谷口警部:警視庁捜査一課勤務・事件の担当捜査官・佐山の上司 /  / 矢野:狛江署勤務・事件の担当捜査官 / 新堂:警視庁捜査一課勤務・事件の担当捜査官・佐山班の一員 / 内藤:警視庁捜査一課勤務・事件の担当捜査官・佐山班の一員