怪しい人びと
作品DATA
怪しい人びと
  • 出版社 光文社(ISBN:4334922309)
  • 発刊日 1994/02/28
  • 文庫化 光文社文庫(ISBN:4334726216)
  • 文庫発刊日 1998/06/20
  • Detail 内容:寝ていた女/ もう一度コールしてくれ/ 死んだら働けない/ 甘いはずなのに/ 結婚報告/ 灯台にて/ コスタリカの雨は冷たい
  • お薦め度 ☆☆☆
  • お気に入り指数 ☆☆☆
作品Outline
「俺」は時々、デートの費用を惜しむ友人達に部屋を貸している。「俺」が、たまにはホテルを使えと言うと、女に贅沢を味を教えるのはまずい、と「女を見る目が確かな」友人は返す。
いつものように部屋を貸し、引き上げた頃合を見計らって帰宅した「俺」の目に飛び込んで来たのは、見知らぬ女の寝姿だった。箍が弛み切ったような女との荒唐無稽なやり取りに辟易する「俺」―。だが、そこには意外な事実が隠されていた。(『寝ていた女』より)

平凡な人々の怪しい部分に光を当てた短編推理集。

作品Review
  • 寝ていた女
    家電メーカーに勤めるカワシマは、職場の同僚達に部屋を貸して小遣い稼ぎをしていた。ところがある朝部屋に戻ると、見知らぬ女がベッドに寝ていて、仰天する。女は泥酔しているところをナンパされた、相手の男の身元が判明するまでは部屋を出て行かないと主張するが―。
    カワシマが「女を見る目が確かな」友人に吐いた、ラストのため息に思わずニヤリとさせられました。
  • もう一度コールしてくれ
    社会の底辺をさまよっている芹沢豊は、遊び仲間と共に強盗を計画するが、追われる身となってしまう。
    やっとの思いで逃げ延びた町には、苦い思い出を残した「あいつ」の家があった。
    東野作品にはスポーツマンが数多く登場しますが、一般人のイメージに合致した人物――、爽やかな雰囲気を持つ善人は、ほんの僅かしか存在しません。芹沢豊も、どうしようもないロクデナシですが、今年(2005年)相次いだ高校野球界の不祥事を見ていると、真っ直ぐに成長することの難しさを痛感しました。
  • 死んだら働けない
    川島の上司である林田は、仕事が生きがいをしているような男で、土・日は殆ど休まず、サービス残業も日常茶飯事になっていた。そんな彼が、工場の休憩室で変死体となって発見された。
    林田のような人が、「ものつくり」の世界を支えて来たことを思い、ちょっと居たたまれない気分になりました。
    犯人の気持ちも分からないではないのですが…。
  • 甘いはずなのに
    新婚旅行でハワイまでやって来た「私」と尚美だが、「私」には含むところがあった。
    主人公と同じ誤解を抱いたままに、終章を迎えた読者も少なくないでしょう。先入観や思い込みと言う、平凡な人間にありがちな心理の罠を巧みに利用した、傑作ミステリだと思いました。
  • 灯台にて
    4月1日生まれの「僕」と、4月2日生まれの佑介は、同じ学年だが、歳は丸一歳違う。小柄な「僕」に対し、上級生が一人混じっているかのような佑介―、その体格差が主従関係を生み出した。しかもその関係は、成長しても解消されることはなかった。佑介の自己顕示欲を満足させるために、「僕」は必要不可欠な存在だったのだ。佑介は「いい関係」というが―。
  • 『殺人の門』に似た世界観がある作品ですが、こちらの主人公の方が、役者が一枚も二枚も上手です。
  • 結婚報告
    学生時代の友人からの結婚報告を受けた智美は、同封された男女の写真を見て言葉を失う。そこには、友人とは面立ちが違う女性が写っていた。
    その理由を知りたくて電話を入れるが、何度掛けても、コールサインがなり続けるだけ―。思いあぐねた智美は友人宅の訪ねる決心をした。
  • 人間ドラマの面白さをコンパクトにまとめた本格ミステリ、という印象が残りました。
    男性と女性、双方の狡さや浅ましさが適度に拡散している部分が面白かったのですが、友人の夫の出身地が「新潟」という点が気になりました。東野作品に限らず、ちょっと情けない人間の故郷が「新潟」って設定をよく見ますが、外部の人には、そんなイメージが張り付いているのでしょうか?
    • コスタリカの雨は冷たい
      バカンスでコスタリカを訪れた夫婦が強盗に襲われる。
      言葉の通じない街で途方に暮れる二人。そこに運良く、警官が乗った車が通り掛かるが―。
    • ショートショート的な面白さが味わえる作品です。「人は見掛けに寄らぬもの」という言葉を具現化したような内容ですが、作者には、そんな抹香臭い狙いなどなかったでしょう。
    2006年6月23日に更新
『怪しい人びと』の登場人物一覧
■ 寝ていた女
カワシマ 家電製品メーカー勤務・資材部所属
片岡:主人公の同僚・経理部所属 / 葉山広江:主人公の同僚・片岡の交際相手 / 本田:主人公の同僚・購買部所属 / 中山:主人公の同僚・総務部所属 / 宮沢りえ子(ナオミ):主人公の部屋で寝ていた女
■ もう一度コールしてくれ
芹沢豊 パチンコ店のホールスタッフ
中道昇:芹沢豊の友人・マージャン店の店員 / タカシ:芹沢豊の友人 / 山田:自宅で金を貯め込んでいた老婆 / 南波勝久:元野球審判
■ 死んだら働けない
川島 自動車部品メーカーに勤務
林田:川島の上司・工場の休憩室で遺体となって発見される / 葉子:川島の同僚 / 宮下:川島の職場の先輩 / トラさん:川島の職場の先輩 / 課長:川島の上司 / 山岡:溶接機メーカー勤務
■ 甘いはずなのに
私(伸彦) 会社員
尚美:私(伸彦)の妻 / 老人:ハワイで知己を得た老紳士 / 老婦人:老人の妻 / 宏子:私(伸彦)の娘・数ヶ月前に事故死している
■ 灯台にて
僕(私) 文学部に籍を置く大学生
佑介:社会学部に籍を置く大学生 / 小泉:灯台守り
■ 結婚報告
智美 出版社勤務
山下(長谷川)典子:智美の短大時代の友人 / 山下昌章:典子の夫 / 堀内秋代:山下昌章の元恋人 / 桜井:山下夫妻の隣家にすむ住人 / 橋本刑事:事件の担当捜査官
■ コスタリカの雨は冷たい
僕(愛称:テッド) トロント勤務の駐在員
ユキコ(愛称:アン):主人公の妻 / グレース:主人公の仕事を補佐 / タニヤ婆さん:主人公夫妻の隣家に住む老婦人 / 佐藤:ホテルマン / ニック:主人公の友人 / キャシー:女性弁護士